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たねびとの歌U
【ファンタジー 官能小説】

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健康診断-1

わしは一度田畑を売って都会に出たが、今度は郊外に居を移した。
ちょっと真似事の畑仕事もしたくなったし、都会にいるといつ娘っ子たちに襲われるか戦々恐々の毎日だったからだ。
わしはここしばらくの間、平穏な毎日を過ごしていた。晴耕雨読っていうのかい?
ところがある日、一通の封筒が区役所から来た。
健康診断を受けるようにとの指示だった。場所も指定されている。
料金は無料ということだったから、この際健康をチェックするのも良いかなと思った。
わしは区内の大きな保健センターに行った。
身長・体重測定や心電図など一通り終わった後、案内の看護師がわしに言った。
「1週間ほどで結果が郵送されますので、きょうはこれでもう宜しいですよ」
わしは帰りかけたが、一人の若い看護師がやって来て引き止めた。
背のすらっと高いゆで卵のような顔した可愛い娘っ子だった。
「あの……一応、授精能力検査を受けて行って下さい」
それを聞いて、わしに帰って良いと言った看護師が口を挟んだ。
「良いじゃないの。この人はもうお爺さんなんだし。時間の無駄よ」
「ええ、でも規則ですから」
「あんた、新人ね。堅物にも程があるわ」
「でも、例外を作ってはいけないと、通達が来ていますので」
「勝手にしなさい」
「はい、そうします。それが仕事ですので」
そういうとその卵っ子は長い手をわしに伸ばして腕を取ってエスコートしてくれたんだ。
ほら肘に腕を通してカップルが歩いているだろう。あれさ。わしは気分がよかったね。
すると『授精能力第1検査室』ってとこに連れて行かれた。
引き戸を開けると、下半身裸の若い男の前で、恐ろしくナイスボディの女が白衣の前を開いて自分のヌードを見せていたところだった。
「あっ、すみません。でも使用中の札がかかってなかったものですから」
卵っ子がそう言って詫びたが、ナイスボディが睨みつける。
卵っ子はわしのことを手で示して、その女に言った。
「こちらの方もお願いしたいのですが」
ナイスボディはわしを横目で胡散臭そうに見ると、卵っ子に言った。
「そんな爺さんに見せる裸はないよ」
ところが卵っ子も負けていなかった。
「そんなやり方は指示違反だと思います。
きちんとローションを塗って手技による刺激で勃起や射精を確かめないといけないと決められている筈です」
「あんた……馬鹿じゃないの。
そんな教科書通りのことやってたら、日が暮れるじゃない。
これで勃起しなかったら、不合格。それですぐ済むじゃない」
「通達にも、お年寄りだからと言って、検査を手抜きすることがないようにと念を押しています。
失礼ですが先輩は2つの違反をしていると思います」
「じゃあ、あんたがやりなさいよ。私は結構。遠慮するわ」
「わかりました。じゃあ、検査室を借りてわたしが行います」
「ふん、第1から第5までみんな検査員が詰めているわ。
どこか空いているところを捜すといいわ、見つかるならね」
卵っ子はわしの腕に優しく腕を絡めて退室した。見ると少し涙ぐんでいた。
「あの……看護師さん、無理して検査しなくても、わしはあっちの方はもう全然駄目だし」
わしがそう言うと、卵っ子の目から涙がポロポロと流れ出た。
「お爺さん、どうかそんなことを言わないでください……
わたしは……ただ、仕事をきちんとしたいだけなんです。
きょうがこちらに来ての初仕事で、学校で教えられた実習の通りにしなければ学んだことの意味がないのです」
わしは検査されるとすぐ能力があることがばれてしまうから、できれば受けたくないんだが、娘っ子の純な涙には弱いので、仕方なくついて行くことにした。
 


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