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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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期末テスト=恋人検定テスト!?-2


昔、家族で知り合いの金持ちに行った時、母さんの手をその家の番犬であるドーベルマンが噛んだ。
その時の母さんの笑みと言ったら、今思えば、その場で腰を抜かして、そのまま這いずりながら許しを請いたくなるぐらい怖かった。まぁ、まだ幼稚園児だったアタシにはただ笑っているようにしか見えなかったけど。
で、その笑みを見たドーベルマンは速攻で仰向けになった。犬の『降参』のポーズだ。
それから、その家の人の言うことを聞かなくなったと後で聞いた。ドーベルマンも優先順位を主人より上にしたくなるほど怖いって訳だ。
「……結局、依頼主さんがキャンセルされましたの」
「へ、へぇ……でさ、店の方は無事?」
孝之がひきつりながら、母さんに聞いた。
母さんはパリで宝石店も一店経営してる。暴動で略奪に遭ってないか?と言うことらしい。
が、遭う訳ないだろ。
「えぇ、大丈夫ですよ。何人かの暴動の意味も分かってない、便乗して調子に乗ったガキが入ってきましたが、『丁重』に帰っていただきました」
……絶対『丁重』にじゃない。そいつら、トラウマで日本人恐怖症にならなきゃ良いけど……。
「……そ、それじゃあさ、母さんが帰ってきたんだし、久しぶりにみんなで昼飯にしよう」
アタシは場の雰囲気を変えるためにそう言った。
「あら、じゃあ久しぶりに私がつくってさしあげましょう」
そう言って、母さんは荷物を置いて微笑みながらキッチンへと消えた。
「…ふぅ、怖かったぁ」
「母さん、大分イラついてるな。普段は優しいんだが……」
「優しい人程、怒ったら恐いって言うのの発展形だからな」
とまぁ、こんな具合に再会劇の第一幕は終わった。



再会劇第二幕の始まりは昼飯の後だった。
「……では、白雪さん」
「ん……なに?」
久しぶりの母さんの美味い料理で満腹になったアタシは食後のコーヒーを飲んでいる。このコーヒーも母さんが煎れたものだ。これもかなり美味い。
ちなみに孝之はジャンケンに負けて皿洗いをしてる。
そんなアタシに母さんはいきなりど真ん中ストレートで球速160kmの言葉を投げてきた。
「彼氏さんに会わせて下さいな」
グフッ!!
「か、母さん!?いきなり!?」
吹いてしまったコーヒーを拭きながら、アタシは混乱する。会いたいって……。
「あらあら、そんなに驚く事はないのではありませんか?」
「いや、普通はどんな人?……とかさ、そういう風に聞かない?」
「……そう言われれば、そうですね。では、どんな人なんですか?」
「……………う〜ん」
どういう人……?
そういう風に聞かれてみれば、憲ってどういう風に言えばピッタリなんだろう。
「……難しいなぁ」
「それでは、白雪さんはその方を愛してるのですか?」
「それはもちろん!」
アタシの中で、『憲』って言う人物は間違いなく中心に存在してる。しっかりとアタシの心を支えてくれてる大黒柱だ。
「あらぁ、即答なんですね」
「母さんには隠し事したくないからね。それに『憲を愛してない』なんて嘘、絶対つきたくないし」
嘘でもそんな事を言ってしまったら、アタシは二度と憲に顔向けできない。
母さんはアタシの返答を聞いたあと、コーヒーを一口飲んで間を置いてから、言った。
「……この前、彼氏さんに泣かされたのにですか?」
ゴフッ!!
「か、母さんっ!?」
「孝之さんから聞きましたよ。泣かされて、お部屋に閉じ籠ったとか」
孝之〜!!あの野郎、よりにもよって一番知られたくない母さんに言いやがって!
しかし、今は孝之の事を置いて、しっかり誤解を解いとかないと。
「あ、あれはアタシの勘違いだったんだよ。憲は悪くないんだって」
「例え勘違いでもあなたを泣かしたのは事実でしょう?見過ごせませんね」
ど、どうしよう……。このままじゃ、憲とアタシの仲を認めないなんて言われかねないぞ……。別に認めてもらえなくても別れることなんて、絶対に無いけど、やっぱり母さんには認めてもらいたい。
「皿洗い、終わったぜ〜」
む、事を悪化させた孝之め。呑気な顔しやがって!
「あれ、どうしたの?」
「孝之さん、白雪さんは確かに彼氏の憲さんとやらに泣かされたのですね?」
「……え、はぁ…確かに」
ギンッと、孝之に殺気を送る。その瞬間、孝之は理解したようだ。


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