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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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期末テスト=恋人検定テスト!?-1

11月も終わろうかとしている日曜日。
昨夜、それなりに遅くまで起きていたアタシは心地良く睡眠していた。
「……ん〜、け…ん」
そんなアタシの平和な日常はある一本の電話によって脆くも崩れさろうとしているとは、知るよしもなかった。


『期末テスト=恋人検定テスト!?』


ドカドカドカドカドカッ!!
ドンドンドンドンドンッ!!!
「し、白雪ぃ!!起きろ!!!一大事だぁぁぁぁぁ!!!!」
ん………何だよ。せっかく憲の夢見てたってのに。朝っぱらから煩いぞ!!
孝之の足音とノック音と叫び声に起こされたアタシの機嫌は一気に急降下。
何やら酷く焦っている孝之は、そのままアタシの部屋のドアを勢い良く開けて飛び込んできた。
「ヤバイぞ!!猛烈にヤバイぞ!!!」
うわぁ、すげぇ焦ってら。こんなに焦る孝之は久しぶりだ。
ちょっと笑える。
熊さん柄のパジャマ+ナイトキャップの姿も合わさって、非常に滑稽だし。
「ふわぁ……。で、何がそんなにヤバイんだ?アンゴルモアでも来たのか?六年程遅いって言ったら出直すかもしれないぞ」
「し、洒落てる場合じゃないぞ!白雪の言う通り、来るって電話が……」
「……誰がだよ?」
「確かに恐怖の大王みたいなもんだけど。今、成田だからって」
「だから、誰が?」
「……母さんだ。母さんが帰ってくる」
………………………へ?
「なにぃぃぃぃぃ!?か、かかか母さんがぁ!!??」
「そうなんだよぉ!!どうしよう!?」
ど、どうしようって……アタシが聞きたい!
アタシ達、孝之・白雪兄妹の母親…矢城 幸恵。
フランスに移住して仕事をしていた、世界的にも結構有名なジュエリーデザイナー。
そして、恐怖の代名詞。
まさにアンゴルモアな女性が帰ってくる……。
憲、助けて(泣)。



「あぁ……もうすぐだな」
「……うん、もうすぐだ」
あれから数時間後……。
アタシと孝之はリビングの隅で縮こまっていた。本当は逃げたかったが、逃げたら間違いなく殺られる……。
とは言っても覚悟を決めようにも突然過ぎるし。はぁ、せめて一週間前に電話してほしかったなぁ。
………ガチャッ!
『只今もどりましたよ。孝之さん、白雪さん』
……か、帰って来た。
泣きそうな顔をした孝之がアタシの方を見る。
目が助けを求めてるが、アタシだって助けて欲しい。首を振って立ち上がる。
苦い顔を出来るだけ笑顔に取り繕って玄関に向かった。
「お、おかえりなさい」
「お、おかえりぃ」
「はい、ただいま」
玄関で笑顔を浮かべて立っているのがアタシ達の母親、矢城幸恵…46歳。なのに、外見は恐ろしく若い。
二十代って言ってもほとんどの人間が疑わないだろう。
「お久しぶりですね。お元気でしたか、白雪さん?」
「あぁ、ま…まぁね」
会話もそこそこにリビングに戻った。
「……でさ、何で帰って来たの?」
「あら、ここは私の家ではありませんか。問題は無いはずですよ。…それとも、帰って来ない方が良かったのですか………?」
う……母さんの必殺技その一の『涙目』が出た。
この目を見ると例えヤーさんでも逆らえなくなるという、厄介で強力な目だ。
「そ、そんな事はないよっ!」
思わず慌てて否定する。この思わず、っていうのが厄介なんだ。
「では、良いではありませんか」
パッと、目が瞬時に戻る。…やはり演技だったか。
「でもさぁ、仕事が忙しいから今年は帰れない、みたいな事言ってなかった?」
「ああ、言いましたね。お二人もご存知だと思いますが、いまパリで暴動が起こっているでしょう?」
あぁ、近頃ニュースで話題になってたやつか。……って事は、母さんは逃げてきたのか?
この「矢城家の魔神」が……?そんなに酷いのか、パリの治安は?
「その暴動で、今年から来年にかけての大きなお仕事を一緒にするはずだった宝石商が国外に逃げやがりましてね」
ニッコリと母さんが笑う。
うぁ、怒ってる……。。
母さんのこの笑みは必殺技その二だ。この笑みは母さんの怒りによって発動する。


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