ゼンT-1
驚きが徐々に現実味を増して・・・
甘く・・・柔らかなゼンの唇の熱に葵はめまいを覚えた。
頬に添えられているゼンの右手が、ゆっくりと葵の耳をかすめ・・・小さく葵の肩が跳ねる。
「・・・・っっ」
きゅっと目を閉じて頬を染める葵に気が付いたゼンは、その手を後頭部へと移動し更に深い口付けを求めた。
葵は息苦しさを感じ、わずかに唇をひらいたその隙をねらってゼンの舌が侵入してくる。彼の舌先が葵の舌に触れると・・・目を見開いた葵は必死にゼンの胸元を押しやった。
「・・・んんっ!!」
ぎゅっと強く抱きしめられ、密着した体から互いの鼓動が伝わってしまいそうだった。足が震える葵の太ももを割って、ゼンの膝が差し込まれた。
次第に激しくなるゼンの口付けに、押しのける葵の手も力が入らなくなり・・・熱に浮かされてゆく・・・
大人しくなった葵を慈しむように、ゼンの舌が優しく葵の舌を絡める。
頭がしびれるような感覚に意識をもっていかれそうになるのを必死に耐えながら、葵の口からは荒い息遣いが漏れた。
「んっ・・・ぁっ・・・っ」
「・・・・・」
何かの視線に気が付いたゼンが視線をまわりに向けると・・・
柱の陰から九条がこちらを睨んでいるのが見えた。・・・さらにその奥には大和の姿がある。
(・・・・あいつら)
ゼンは視線を葵へと戻す。
ぎゅっと胸元にしがみつき、甘い吐息をもらす葵を胸に抱いて・・・このまま連れ去ってしまいたい衝動にかられた。
ちゅっと音を立てて長い口付けから葵を解放する。その音にさえ顔を赤らめてうつむこうとする葵の顎に手を添えて・・・唇が触れそうな距離で視線を絡めた。
「お前からの口付け・・・いつまでも待つって言ったけどな・・・本当は今すぐにでも欲しいんだ」
「・・・・っ」
「このまま俺の腕の中に閉じ込めて・・・誰の目にも触れさせたくない」
ゼンはもう一度葵を強く抱きしめた。彼にとって大事なものに優劣はなかったはずなのに・・・葵と過ごしていく中で、彼女の存在を無視できなくなっていた。
いつからか、彼女に自分だけを見て欲しいという願望さえもつようになり、彼女の永遠の命の中・・・唯一の男になりたいと願ってしまった。