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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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王の口付けU-1

王宮に戻った頃にはすでに日が暮れており、葵たちはこの日はじめてゼンを交えて食卓を囲んだ。





ゼンは異世界ことを話してくれた。目を輝かせながら聞いている葵の反応がおもしろく、その様子を他の王へ話したのは言うまでもない。





「前に言っただろ?
俺の世界には五大国、五人の王がいるって。与えられてる武器も違い・・・その力も様々だ」





「・・・とにかく個性的なやつらでなっ!!」





思い出したように笑い出すゼンに、(あんたもな!!)と内心つっこみをいれた蒼牙だが・・・





「そなた程ではなかろう・・・」





と低い声で言葉を発したのは九条だった。スープを口に運んでいた大和は噴出してしまい、蒼牙は笑い転げている。仙水は大和へナプキンを渡し、葵は身を乗り出しゼンの話に聞き入っている。





「ははっ!!
そう突っかかるなよ九条」





器の大きなゼンは滅多に怒らない。むしろ、葵たちとこうして時を過ごすことが・・・ゼンには一番の楽しみになっていた。





「武器は・・・
俺の槍、悠久は剣、精霊は弓・・・吸血鬼は爪・・・・冥界は鎌だ。そしてお前が杖・・・」





「・・・それぞれ違う物なのですね」





「あぁ・・・お前はどことなく悠久の王と似ているところがある」





「悠久の王様・・・ですか?」





同じ女性なのかと葵が首を傾げると、





「いや・・・俺達の世界の王は代々男だ。似ているっていうのは・・・力の属性がお前と同じ癒しの類なんだろうな」





ゼンは葵の髪を指先にからめ、透き通った彼女の瞳を愛おしげに見つめる。





「あいつは神剣をもっている。だからお前と全く同じってわけでもないんだ」






「剣なら九条と同じだね」






「・・・そうだな」





たいした興味も見せない九条にゼンはいくつかの疑問を感じていた。






「王の従者に神官か・・・
葵が神のような存在で、従える者が神官って呼ばれるのはわかる。だが、俺の世界には神官ってやつがいないんだ。大臣や家臣ならいるが・・・」





しばらく考える素振りを見せた葵は口を開いた。






「私が死んだら・・・その後の世界を支えてくれる存在なのだと思います」




「ゼン様の世界は、次代の王が現れるか・・・当代の王が倒れるかで変わるとおっしゃってましたよね?」



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