民宿-2
二階のその部屋には三つの布団が並べて敷かれていた。窓際にマユミ、その隣にケンジ。畳二枚分のスペースを空けて入り口にへばりつくようにケネス用の布団が伸べられていた。
「そんなに遠くに離れなくてもいいじゃないか、ケニー。電話で話さなきゃいけないぐらい遠いぞ。」ケンジが自分の布団の上にあぐらをかいたまま言った。
「なに言うてんねん。おまえら今夜もいちゃつくにきまっとるやんか。わい、いたたまれなくなるのは火を見るより明らかや。ほんまやったら別の部屋に寝るべきところや。」
「心配するな。お前には迷惑かけないから。」
「微妙な言い回しやな。」
夜も更けて、三人とも眠ったふりをしていた。特にケネスは、息を殺したまま、いつケンジとマユミの行為が始まるのかと、期待で胸をふくらませていた。
ごそごそとケンジが動き出す音がした。
ケンジはマユミの方に寝返りをうって、彼女の布団の上に覆い被さった。
「もう、ケン兄ったら。」マユミは目を開けて小声でそう言った後、恥じらったように微笑んだ。「ケニーを起こしちゃうよ。」
「大丈夫。大声を出さなければ平気だよ。」
窓から射す月の光が、マユミの布団のところだけをスポットライトのように白く照らし出している。ケンジはマユミの布団をはぎ取り、身体を重ねた。そしてそっとマユミにキスをした。
マユミはさっきの白いビキニの水着姿のままだった。
やがて二人とも月明かりの中で目が慣れてきた。二人はひそひそ声で話し続けた。
「マユ、きれいだ、いつ見ても、おまえの身体・・・。」
「どうしたの?顔が赤いよ。日焼け?」
「あ、あのさ、マユ、」
「なあに?」
「そのビキニ、少しだけ下げてみてくれないか?」
「え?どういうこと?」
「ま、まだ全部脱がなくてもいいからさ、ちょっとだけ。」
「いいけど・・・。いっそ全部脱ごうか?」
「え?そ、それは・・・・。」ケンジはますます顔を赤くして言葉を濁した。
「変なケン兄・・・。」そう言いながらマユミはブラを外し、ビキニもあっさりと脱ぎ去って全裸になった。
ぶっ!ケンジが突然自分の鼻を押さえた。指の隙間から血が垂れ始め、マユミの腹にぼたぼたと落ちた。
「な、何っ?どうしたの?ケン兄!」マユミは驚いて頭をもたげた。
「は、鼻血が・・・・・。」
「えー?鼻血?なんで?」
「お、お前の水着の日焼け跡が、あまりにも刺激的で・・・・。」枕元に置かれたティッシュを手にとって、ケンジはそれを丸めて鼻に詰めた後、マユミの身体に落ちた血を拭き取った。
マユミの肌は、水着のブラとビキニの所だけ、透き通るように白く残り、他の場所は褐色に色づいていた。
「セクシーすぎるっ!」ケンジは鼻にティッシュを詰めたままマユミの身体をぎゅっと抱きしめた。「水着の日焼け跡はオトコのロマンっ!」
「うふふ、ケン兄、嬉しい。」マユミは続けた。「じゃあさ、今夜はあたしが上になるね、この日焼け跡がよく見えるように。」
「え?い、いや、いいよ。お前仰向けになれよ。」
「なんで?」
「背中が、痛くて・・・・。」
「背中が?ちょっと後ろ向いてみてよ。」マユミが促した。ケンジはマユミに背中を向けた。「ほんとだー、赤くなってる。」
「なんだかんだで背中だけいっぱい日焼けしたみたいだ。」
マユミは布団に仰向けになった。マユミの裸体は月の光に包まれた。ケンジはそのマユミの肌が、さっき口の中で甘くとろけた、つややかなチョコレートの色と同じだと思った。そして水着の跡だけ、白く浮き上がって見えた。
「や、やばい、俺、こういうマユの身体、抱くのが夢だった・・・。」
「早く来て。」マユミが手を伸ばした。ケンジはゆっくりとマユミの身体に自分の身体を重ね合わせた。マユミはケンジの首に手を回した。「ケン兄・・・。」
「マユ・・・・。」
ケンジの口がマユミの唇を覆った。「んっ・・・。」そしてケンジの舌がその唇を割って中に入ってくると、マユミは思わずケンジの背中をぎゅっと抱きしめた。
「う、うぎゃっ!」ケンジが口を離して悲鳴を上げた。「い、い、痛い痛い痛いっ!」
「しーっ!大声出すなって言ったの、ケン兄でしょ?ケニーに気づかれちゃうよ。」
ケンジはとっさに自分の口を押さえた。そしてすぐにマユミに抗議した。「お前、今、わざとやっただろ?」
「誤解だよ。感じれば抱きしめたくなるの、当然じゃん。」
「困ったなー。」
「わかった。じゃああたし、何もしない。ただ寝てるだけ。それでいい?」
「いわゆるマグロってやつだな。」
「何それ?」
「いいよ、知らなくても。あんまり品がいいとは言えない言葉だ。」ケンジは笑った。「じゃあ、マユ、今夜は俺が一方的に奉仕するから、お前何もするなよ。」
「わかった。」
「ただ、感じるだけ。」
「うん・・・。」
ケンジはマユミの白い乳房にむしゃぶりつき、舌で乳首を転がし始めた。
うっすらと目を開けて、二人の様子を見ていたケネスは、すでにかなりの興奮状態だった。「(まったく、人の気もしらんと、あの二人・・・・。)」