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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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断罪の結界-1

縛り付けるという言葉にゼンは葵の意図をはかるため彼女を見つめた。





「あなたの領地を取り上げるつもりはありません。罪なき者たちが出入りすることも制限しません・・・ただあなただけは・・・」





杖を召喚した葵は杖の底で床を突いた。光輝く葵の力は波紋のように広がる。それは・・・慈悲のものではない、怒りを含んだような鋭いものだった。





光の波紋は、その国を囲う巨大な外壁まで広がり・・・五つの柱をかたどってゆく。柱から新たな光が線となって結びつくと・・・葵の考えが読めたゼンは己の槍を高くかかげた。





ゼンの稲妻が葵の光を追いかけるように広がった。ビリビリと音をたてて五芒星の陣を結ぶ。





九条が心配していた小さな村を結界で保護する方法ではなく・・・葵は暁林へ戒めの罰を与えた。





人界の王・葵がくだした民への罰はこれが初めてである。





葵の甘さにゼンはしょうがないな、と言いたげな表情を彼女へ向けていた。戦人であるゼンは葵ほど甘くはない。彼に与えられた力は戦う力であり、葵のように慈悲にあふれたものではない。




王に与えられた力は、まさにそれぞれを象徴している。





「まったくお前は・・・」





頭をぽんぽんと叩かれ、葵はゼンを見上げた。ゼンの力が加わることによって、戒めだけではなく裁きの結界へと変化した。





暁林が悪事を働けば、たちまちゼンの力に制裁を受ける。そして葵の戒めに彼はここを出ることも許されない。





「ゼン様ありがとうございます」





葵が微笑むとゼンは小さく頷き、暁林を睨んだ。





「・・・何を施されたかわかるか?」





「はっはっは・・・っ!!
あんなもので俺を捉えたつもりか!?見張りがいないのだから裁くことも出来まいっ!!!」





暁林は落ちている剣に目を向けると、瞳に妖しい光をたたえ、奇声をあげながら手を伸ばした。





「ギャハハッハッ!!
全て俺のものだっ!!!貴様らなんぞに俺の野望は止められんっ!!!!!」





拾い上げた剣をゼンへと向けて突進する。だが、ゼンは微動だにしない。





閃光が閃き、剣をもつ暁林の片腕に炸裂した――――・・・





「ギャアァァァァッ!!!!」





暁林の断末魔が虚しく屋敷に響く。感情をなくした表情の葵はゼンへ声をかけると二人は部屋をあとにした。







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