四番目の神官-1
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ゼンが出入りするようになってから更に数年後・・・。
小さな輝きが王宮の真下をうろうろしている。すぐに気が付いた葵は神官たちに声をかけ、王宮を降下させた。
蒼い髪に丸い目を輝かせて、満面の笑みを浮かべた口元には可愛い八重歯がみえた。
翼を広げた葵が地に足をつけると・・・
全力疾走してきた小さな少年は勢いよく飛びついてきた。
「葵・・・っ!!」
懐かしいその少年の声と姿に葵は涙を浮かべ彼を抱きとめた。以前より大きく育った彼の姿をみて目を細める。
「おかえりなさい、蒼牙・・・っ」
「ただいまぁっ・・・!!葵っ!!」
気持ちの優しい仙水は熱くなった目頭を押さえている。九条や大和も小さく頷き、蒼牙と握手を交わした。
彼にも何か力を・・・と考えた葵だったが、まだ幼いその姿を見て首を横にふり、神官として迎えるまであと数年待つことを決めた。蒼牙が神官として力を受けるのは、彼が十六を迎えてからとなった。
頻繁に顔を出すゼンは蒼牙とも顔を合せ、ことあるごとに彼を子供扱いしては・・・蒼牙には"雷のおっさん"と呼ばれていた。
喧嘩するほど仲が良い、というまさにその通りのやりとりに葵は微笑ましく見ていた。蒼牙は十六で成長がとまったが、それは葵も同じだった。
九条が恐らく二十三、大和は二十一、仙水も大和と同じくらいだ。ゼンは百五十年を越えた王らしいが、見た目は二十代後半といったところだろう。
異世界の王も同じくして、即位した時より年をとらなくなる。王の命は長く、戦いによって命を落とすか・・・次代の王が誕生すればその役目を終えるという。
人界の王とは違ったその世代交代のある異世界の王に、葵は視線を落とした。いつかゼンと別れのときがくることを予感して・・・。
彼の足が遠のいたのはそれからしばらく経過した時だった・・・