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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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約束T-1

―――――・・・



試練の日より百年後。






上空に浮かぶ王宮の広間。




真っ白な翼を背に、膝を抱えて目を閉じている少女の姿があった。






傍には美しく輝く王の杖が光り、彼女が目を覚ますのをじっと待っている。






力尽きた葵の体は"世界の意志"の加護により絶命を免れていた。だが、破壊された体の組織は自己治癒力を失い彼女の傷がふさがるまで長い時間を要した。






幼い少女は目覚めることなく、静かに眠っている。






時折、悲しげに眉間にしわをよせて涙が頬を伝った。





葵は夢を見ていた。





・・・愛しい四つの光が失われていくのを何度も必死に手を伸ばして掴もうとするが、手からすり抜けてしまう・・・。





『斉条・・・っ!!
蒼牙!!・・・大和!!仙水・・・っ!!』





何度も繰り返し見る悪夢は守れなかった彼らに対する罪悪感なのか、それとも・・・彼らが彼女の力になれなかったことへの後悔の念なのか・・・。






そしてまた、
葵がその手をすり抜ける彼らの光に涙していると・・・






『葵様・・・
私たちの魂はいつでも貴方と共にあります・・・だから、どうか泣かないで・・・・』






振り返った先には何度もその名を叫んだ愛しい彼らの姿があった。






斉条が近づいて、泣き崩れている葵の傍へ跪き・・・頬の涙を指先でぬぐった。






優しい眼差しと指先・・・変わらぬ斉条のぬくもりに葵はまた涙を流した。






『ごめんなさい斉条・・・貴方たちを巻き込んでしまった・・・』






震える肩を抱きしめられる。






『どんな時でも貴方の傍に居たいと願った・・・それは我らが望んだことです』






『でも・・・・』






背中を優しくなでられて葵は斉条を見上げた。言葉を続けようとする葵の唇に彼の指先が触れる。






『これからは私があなたを守りたい・・・必ず葵様のもとへ戻ります・・・だからもう泣かないで』






微笑む斉条の傍にもう一人の青年があらわれ、彼の肩に手をのせた。






『東条・・・・』






目を見開く葵と、その姿をみて頷く斉条は穏やかな表情を向けている。






大和や仙水、蒼牙が葵を囲み・・・
彼らと強く手を握って葵は大きく頷いた。





『ずっと待っています・・・貴方たちが戻るのを・・・』


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