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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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純血-1

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穏やかで気怠い静寂を切り裂いたのは透き通るアルトの声だった。

 「鍵を忘れて眠るなんて君らしくないな。まだ夕刻だっていうのに、今日は随分疲れているんだね」

どの部屋にも窓のない研究施設に刻の流れはあまり関係ない。

抉じ開けた重い瞼の先で、それは天井のライトに照らされ美しく光って見えた。

仰向けの顔に落ちてくるそれは銀色の長い髪。

色素の薄い琥珀色の瞳が半月に歪み、アズールの身体に被さるようにして見下ろしている。

「・・・・ノア、何しに来たんだ」

「さっき仕事から戻ったんだ。それでダーリンの顔が見たくなってね」

微睡むアズールにノアという男は啄むような口付けを落とす。

しまった、と思うよりも早く肩を抑えられたアズールは、もう一度深くその唇を合わせられた。

「アズール、今日はなんだかいい香りがするね」

「さあ、なんのことかな」

「隠しても駄目。可愛い玩具買ったみたいじゃない」

シーツに縫い止めるように両肩に手を付いて見下げてくるノアは妖艶に微笑む。

それを見たアズールはサッと血の気が引く思いがした。

「ノア、お前まさか」

「俺は何もしてないよ?」

「あれは実験体だ。無闇に触れるな」

「彼女、混血だったね。悪い夢でも視た?寝覚め悪いでしょう」

舌の上に残った甘い感触にアズールは「その通りだ」と、あからさまな舌打ちをする。

粘膜をじわじわと溶かして侵入してくるような、そんな甘美な痺れが身体から自由を奪っていく。


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