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溺れる爪痕
【ファンタジー 官能小説】

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幻覚-6

 紅潮した身体で何も分からず頷くシウを見届けてアズールは部屋を後にした。

外側から施錠する蝶番の扉は重厚で、それを閉ざせば一切の音は遮断される。

シウは疼く身体を引き摺るようにしてベッドまで歩き、倒れ込むとすぐに深い眠りに落ちた。

初めての刺激、初めての体験に疼きより疲労で既にその身体は限界だったのだ。

一方で、シウの部屋に施錠し壁を寄り添うようにして歩いたアズールは隣の部屋の扉に手を掛け、そのまま、床に膝を落としていた。

ドクン・・ドクン・・とゆっくり、しかし重く跳ねる鼓動は確実にシウの持つ毒に当てられていた。

「・・はは、少し意地悪するだけのつもりだったんだけどな」

思いの外痺れている自身に呆れつつも、熱を帯び始めた胸に手をあて考える。

あの呼気にも催淫作用があるってことか・・・。

体内に回る毒を頭に刻み込み、アズールは短い呪文を口ずさむ。

一瞬で解毒された身体を起こし扉を開けると、アズールもベッドに身を投げた。

シウの部屋よりも一回り広いそこはアズールの部屋で、その建物自体が彼の研究施設なのである。

「・・・・お休み」

譫言のように喉元を震わせるだけの言葉を紡いで、シウの放つ甘い香りに包まれたままアズールもまた、重い瞳を静かに伏せた。


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