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サクラ大戦〜独逸の花乙女〜
【二次創作 その他小説】

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サクラ大戦〜独逸の花乙女〜-7

程なくミラビリーシャに着いた二人は玄関の扉を開ける。
「じゃあ、私は舞台の練習があるから、暇だったら、見に来てな」
そう言うと舞台の方に歩いていく。
特にする事もない龍一郎はミラビリーシャの中をブラブラと歩いていた。
「いた〜♪龍さ〜ん!」
前からミリーが息を切らして走ってくる。
「支配人がお呼びです!じゃあ、伝えましたよ〜♪」
用件を伝えると龍一郎の横を走り去っていく。
龍一郎は支配人室のドアをノックして入っていく。
「天城龍一郎です、お呼びでしょうか、支配人」
ダイリーは机に頬杖をつきながら真剣な面持ちで頷きながら口を開く。
「ああ、君には話しておこうと思い、呼んだ次第だ」
龍一郎は今朝の新聞の記事が脳裏に浮かぶ。
(まさか、アイゼンギガントが発見されたのか)
「最近、謎の蒸気事件が多発しているのは知っているだろう?」
「はい、今朝の新聞の記事に載っていましたので」
「その事なんだが、蓮組からの報告によると、アイゼンギガントらしき機体を確認したということだ」
(………やはりか)
「ということは、我々に出撃命令が?」
龍一郎の問いをダイリーは首を振って否定する。
「いや、華撃団の出撃はない」
ダイリーの答えは龍一郎にとって予想外のものだったため、心情が表情にでてしまったらしく、ダイリーは溜め息をつきながら答える。
「陸軍からの要請で、我々華撃団の出撃はない」
「しかし………」
アイゼンギガントは現在最強の霊子甲冑であり、陸軍の蒸気ではとてもではないが、歯が立たないだろう。
「仕方あるまい、華撃団が結成されても、世界最強を誇った陸軍のプライドはそう簡単には捨てられまい」
賢人機関が霊的防衛軍、独逸華撃団を結成しても、いち早く蒸気の効果を示したドイツでは今でも蒸気を主体とした陸軍が大きな権力を有していた。
「だが、陸軍では恐らくアイゼンギガントを捕獲もしくは破壊は困難だろう、その時こそは我々、独逸華撃団が出撃することになるだろう」
龍一郎を見つめるダイリーの視線に一層力が入る。
「初任務にしてはかなり難しいだろうが、君達なら成功させられるだろう」
「はっ、粉骨砕身の覚悟で任務に望みます」
龍一郎の答えに満足しながらも、ダイリーは溜め息混じりに言う。
「陸軍がアイゼンギガントを捕獲してくれれば一番好ましいがな」
しかし、それはかなり望み薄だということをダイリー自身、自覚していた。
「それと今、前回いなかった華撃団のメンバーが舞台でかすみ君と練習している筈だ、会っておきたまえ」
「了解、舞台に行って参ります」
龍一郎は頭を下げると、部屋を出ていく。

舞台裏から練習を覗くとちょうど休憩中らしく、かすみとショートカットで茶髪の女性が話しているのが目に入る。
「少尉?練習見に来てくれたのかい?」
かすみが龍一郎に気付いて話しかけてくる。
「初めまして、私がキャロル・ムスタングです、天城さんですよね?」
ショートカットの女性が自己紹介する。
「ああ、俺は海軍少尉天城龍一郎、よろしく」
龍一郎は会釈すると、舞台裏に戻る。
二人の練習は素人の龍一郎から見ても、優雅で、すぐにでもステージに躍り出れるのでは、と思わせるには十分な魅力を持っているのだった。
その時、後ろから肩を叩かれる。
「龍さん、龍さん」
二人の練習を邪魔しないようか、ミリーにしては珍しく、小声で話しかけてくる。
「どうかしたのか?」
「はい、龍さんに仕事を手伝っていただきます」
ミリーに引っ張られ、事務局の椅子に座らされる。
「これが、グッズの入荷数で、こっちが客席のシート、それはバーのメニューの食材の計算です」
目の前に資料と記入紙を置かれて、ペンを渡される。
「私は大道具を整理してますから、分からないことがあったらキャラメトロンのこの番号に通信してくださいね♪」
ミリーは事務局から出ていってしまう。
事務局にはカリカリと、ペンの走る音が響く。
ーカタンッ………。
ようやく、机に置いてあった全ての仕事を終わらせてペンを置いて、時計をみると正午をとっくに過ぎていた。
昼食を採るために食堂に向かう。
ミラビリーシャの食堂はかなり大きく、料金を払うと自動調理蒸気によって選んだ料理が出てくるのである。
龍一郎は栄養が程良く揃ったランチAに決めるとボタンを押す。
装置が蒸気を吐き出しながら、料理を作っていく。
受け取り口から出てくる料理を待っていると、隣のメニューボタンにキャロルがやってきた。
「昼食ですか?」
キャロルの問いに「ああ」と軽く頷く。
龍一郎は料理が出てきて食事の席に座る。
「ご一緒してもよろしいですか?」
キャロルがパスタののった盆を持ちながら聞いてくる。
「構わない、好きにしてくれ」
「では、失礼します」
ニッコリと微笑みながら、座る。
ランチを口に運んでいくと、キャロルが問い掛けてくる。
「天城さんはかすみさんと一緒に住んでるんですよね?」
恐らく、かすみから聞いたのだろう、疑問というより、確認に近い聞き方だった。
「そうだが、何か?」
答えた瞬間、先程まで笑みを絶やさなかった美顔が消え、考え込むかのように険しい表情になってしまう。
「年頃の男女が一つ屋根の下、アスカさんは……………」
ブツブツと一人で呟き始めた彼女を龍一郎が観察していると、視線に気付いたキャロルは頬を染めて、慌てて謝る。
「すいません、ちょっと自分の世界に入り込んでしまいました………」
苦笑いしながら、キャロルは食べ終わったパスタの盆を片付けに行く。


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