サクラ大戦〜独逸の花乙女〜-14
「解ったことは英国から技術交換の際に授与されたスピットTypeBを基にしたゲシュペンストシリーズだという事しか判明しておらず、現在ドンを始めとした整備班が解析にあたっている」
スピットには量産型のTypeBを基準とし、各戦況に併せた様々なバリエーションがあり、その改良の安易さを利用してゲシュペンストシリーズに改造したのだろう。
「八方塞がりだが、そう暗い話題だけでも無いぞ」
ダイリーが口の端をニヤリと歪めて言う。
「………と、言いますと?」
不可解な笑みを浮かべたダイリーを不審に思い、聞かずにはおれなかった龍一郎だった。
「明日から、ミラビリーシャに新しいメンバーが加わる」
「それはまた急なお話で…………」
まだ三人の連携も取れているとは言い難いのにメンバーの増加は時期尚早であると考えた龍一郎だったが、軍人である以上は上官、ひいては上層部の命令を表立って否定する事はできない。
「名前はユーリー・ネルソン、ポルトガルの名家の一人娘で、名うての大剣使いだそうだ」
名家のお嬢様という響きに龍一郎は以前、華撃団の資料に目を通していた際に見た北大路花火、神崎すみれ、グリシーヌ・ブルーメール、ソレッタ・織姫、イリス・シャトーブリアンという面々の女性の顔が浮かんだが、大剣を振りますのが似合いそうなお嬢様は華撃団として死線を潜り抜けてきた彼女達の中にもそうそういないだろうと、自分の甘い幻想を脳内で否定した。
「それでは話は終わりだ、これから用事があるので留守はアスカ君に任せてある、頼んだよ」
「はっ、それでは失礼します」
ドアを開けて出て行く龍一郎。
バーに向かった龍一郎は知らない女性と話しているかすみを見る。
「あっ!隊長、遅かったな」
龍一郎に気付いたかすみが振り向いて、少し距離のある龍一郎に向かって叫ぶ。
「すまない、話が長引いたんでな」
近付いた龍一郎はバーデンターの格好をした銀髪の女性を見る。
「彼女は……?」
龍一郎の疑惑の視線を挑発的な笑みで受け流しながら銀髪の女性が答える。
「初めまして、天城龍一郎少尉、私がバーデンターのナリージャ・ハリケーンです、よろしく」
ジロジロと龍一郎を見ていた彼女はかすみの方を向き直すと口を開く。
「こんな奴と一緒に住んでるの?大丈夫?、襲われない?」
いきなり不躾な質問をかすみにぶつけていく。
「隊長はそんな人じゃねえよ、私なら大丈夫さ」
かすみの答えにも満足していない様子のナリージャは龍一郎を睨み付けると指を目の前に突き立てる。
「い〜いっ?かすみに何かしたら只じゃおかないわよ!分かった!?」
龍一郎は眉一つ動かさない無表情のまま答える。