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サクラ大戦〜独逸の花乙女〜
【二次創作 その他小説】

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サクラ大戦〜独逸の花乙女〜-13


アランガルフとは、独逸の前皇帝であり、1924年に王位を継承し、蒸気及び霊子甲冑の製造を推進し、軍事国家としての独逸を取り戻そうとしたが、既に時は欧州大戦が終戦、賢人機関が創立され、恒久的平和が確立された時の世において、凄まじい手腕も持っていたアランガルフでも、それは簡単な事では無かった。
アランガルフは3年の間に私兵団を結成、軍を世界トップクラスに押し上げた後、民衆と政治家達に見放され、弟のアルベルのクーデターにより、王位を剥奪され、国を追われた。
「彼の私兵団の用いた蒸気、ゲシュペンストシリーズは軍の蒸気や霊子甲冑とは一線を画し、帝国華撃団の光武、巴里華撃団の光武Fに迫るものがあったという」
霊子甲冑である光武は蒸気を遥かに上回る性能を誇り、並大抵の戦力差を覆してのけるほどに性能に開きがあるのである。
しかし、アランガルフの開発したゲシュペンストシリーズは光武に匹敵する性能を持ちながら、生産コスト、操縦難などの面から軍の正規採用を見送られた経緯がある。
「しかし、アランガルフ前皇帝は今は国を追われ、ロシアにいると聞き及んでいますが、いったい………?」
龍一郎の問いに軽く頷くとダイリーは手元ね資料に視線を落として答える。
「目的………、それはやはり独逸帝国の復興だろうな」
龍一郎の頭脳は一つの答えを導き出す。
「まさか、アイゼンギガントの強奪、最近の怪蒸気事件は………」
「そう、アランガルフの仕業だろうな、確証は無いが、間違いないだろう」
三年前に追放されたアランガルフは今でも一部の軍人や民衆にとって神的な存在であり、そうした事件を引き起こして、現政府転覆の機会を窺っているのかも知れない。
「しかし、彼には賢人機関のマークもついていると聞きました、そう易々とは戻ってこれるとは思えません」
戦争を再度引き起こしかねないアランガルフは賢人機関にとってみれば、各都市を脅かす魔の存在と同等に危険であり、マークの目を光らせていたはずだった。
「彼が舞い戻ってきたのは、恐らく一年前………」
一年前といえば、1927年であり、龍一郎は思い当たる節があった。
「帝都の金色の蒸気事件、大久保長安の一件があった年ですね?」
確信を持って問う龍一郎にダイリーは頷いた。
「帝都で起きたあの事件は巴里華撃団も出撃するに至り、一時的に欧州から賢人機関の目が離れた時だった、恐らくはその時に独逸に戻って来たのだろう」
大久保長安の一件は帝都を震撼させ、帝国華撃団を追い詰めた。
そこで、巴里華撃団司令ライラック夫人(通称グラン・マ)は巴里華撃団を帝都に出撃させる。
「さらにそれだけでは無い、ある事件も一年前に起きている」
「それは………?」
心当たりの無い龍一郎は首を傾げ、訝しげにダイリーを見る。
「独逸には一年前から降魔が現れ始めたのだ」
「ッ!?」
「その時は、一部の民間人に発見されただけだったのだが、外見は降魔に酷似していたそうだ」
「そうだったのですか………」
その手薄になった瞬間を衝いて、アランガルフは秘密裏に帰国したのであろう。
「ならば、前回の敵はアランガルフの私兵団だったと?」
いくらアランガルフがここ独逸に戻って来ても、私兵団の蒸気までもが政府や軍の監視網をかいくぐって独逸に潜入するのは不可能な話であり、龍一郎の疑問は至極真っ当な事であろう。
「そこが不可解なんだよ、前回の敵もピンポイントで輸送車両を狙って来ている……」
「まさか………!?」
龍一郎の行き着いた結論に二人の顔が険しくなる。
「そう、恐らくは内通者がいる………、しかも政府か軍のかなり上層部、トップに近い地位にいる人間がな……」
前回の輸送車両襲撃もアイゼンギガントの強奪も極秘任務であり、簡単に情報が漏洩するとは考えにくい。
「前回捕獲した敵機からは何か有力な情報は得られなかったのでしょうか?」
僅かな期待を乗せた龍一郎の問いはダイリーの首が横に振られたことで望みを絶たれる。


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