サクラ大戦〜独逸の花乙女〜-10
「これでっ!」
突き出された両手から光線に変換された霊力が三機のスピットを目指して放たれた。
ードガァァン!
爆発音と共に三角形の頂点にいた一番華撃団に近かったスピットの下半身が吹き飛ぶ。
かすみのショットガンを使わなかったのはキャロルの攻撃で相手の陣形を崩すのが目的だった。
「あと二機だ、各個撃破するぞ、油断するなよ!」
コクピットのスピーカーに向かって叫ぶ。
「任してくれよ、隊長!」
かすみの返事を耳に入れつつ、操縦桿を右の敵に倒す。
右のスピットはいち早くキャロルのビームを避け、龍一郎達の迎撃に向かって来たことから、龍一郎はこのスピットを自分が受け持つことを早々に決めていた。
ーキィン!
スピットの突き出したランサーを太刀で払い、返す刀で斬りつける。
しかし、ランサーの間合いで斬りつけたために龍一郎の太刀は敵の装甲を掠めるに終わった。
「でや!」
かすみが気合いと共に両手に持つショットガンを連射する。敵は中世の騎士の様に片手に剣を持ち、片手には盾を装備していた。
その盾が乾いた音を立て、ショットガンの弾を弾く。
連射が終わったと見ると、距離を詰めるべく近付いてくる。「うわっ!」
素っ頓狂な悲鳴を上げながらもかすみは自機を左に滑らせる。
バックパックブースターとかすみ機本来の機動性にはスピットも追い付けずに引き離される。
「これでも喰らえ!」
ブースターを使い、敵の後ろをとる。
バンッ!バンッ!
ショットガンの発射音が響き、スピットが煙を吐きながら穴だらけのボディを地面に預ける。
「ふっ!たぁっ!」
龍一郎の太刀が敵の前の空間を裂く。
相手も巧妙に間合いを保ちながら、ランサーを繰り出す。
「隊長っ!」
その時、スピットを片付けたかすみがショットガンで龍一郎を援護する。
相手はかすみの弾丸を避けるために、バランスを崩してしまう。
それを見逃す龍一郎では無い。
ースパッ!
スピットの背面部に装着されている蒸気ユニットを斬り離す。
蒸気ユニットを破壊されたスピットはその場に崩れ落ちる。「天城さん、こちらは廃棄されたスピットとハリスン大尉の収容が終了しました」
キャロルから状況報告の通信が入る。
「キャロル、パイロットは収容できたか?」
龍一郎の問いにキャロルが答える。
「いえ、無人蒸気では無いようなのですけど、パイロットは見当たりませんでした」
報告を聞いた龍一郎は未だに動かないアイゼンギガントを見る。
「キャロルは、こちらに合流してくれ、アイゼンギガントを調査する」
「了解」
程なくキャロルが合流し、三機がフォーメーションを組みながら、アイゼンギガントに近付く。
動かないアイゼンギガントを調査しようと龍一郎達が機体に触れた瞬間だった。
アイゼンギガントが光を発し、三機を弾き飛ばす。
「くっ!」
龍一郎機のコクピットの通信機にかすみ達の悲鳴が伝わる
「な、何が………!?」
かすみの呟きが、通信機を通して聞こえてくる。
アイゼンギガントの光が消え、視認が可能となる。
「ちっ………!」
アイゼンギガントのカメラアイに光が灯るのが、龍一郎機のモニターに映る。
(一体、何が………?)
アイゼンギガントがアイゼンリッターの二回りも巨大なボディを動かし、こちらを向く。
ーギギギ……
アイゼンギガントのバックパックに装備された一二〇ミリ砲が、音を立てて発射態勢に入る。
「散れっ!」
龍一郎が叫んだ次の瞬間、爆音と共に一二〇ミリ砲から弾丸が発射される。
ードガァァン!
弾丸は見事に華撃団のいた地点に着弾し、避けるために横に飛んでいた三機を爆風で薙払う。
「かすみとキャロルは俺の援護にまわれ、注意を三機全体に分散させろ、やるぞ!」
「了解!」
掛け声と同時にブースターを着火させ、アイゼンギガントに向かって飛翔する龍一郎機。
右に回り込んで、ショットガンを乱射するかすみ機。
かすみ機と龍一郎機に向いた砲塔を目掛けて霊力を発射するキャロル機。
龍一郎は二人の援護を受け、アイゼンギガントのマシンガンが装備されている右腕の関節部を狙う。
アイゼンギガントの装甲は厚く、正面攻撃は十分なダメージを与えられないと考えた結果だった。