The end of the DragonRaja, Chapter 2[The start in new life]-26
「しかしあの男に比べ、お前は随分と情けない姿だな。全くお前如きが俺の弟とは聞いて呆れる。」
アランは黙っていた。
リザルトに敵わず、そしてリザルトが格上と認めたこの目の前の兄と名乗る人物の強さを前にして、
反論する言葉は何もない。
「おい、俺はアランの幼馴染だ。こいつに兄がいるなんて知らない!」
「言ったろ、信じる信じないはお前次第だ。
こいつはなぁ、俺がまだ幼い時に生き別れたんだ。」
レクサスは呆けているアランを無理やり引き連れようとしていた。
何も信じたくはないというように。
「小僧」
「なんだよ!」
デュオの声にレクサスは憤りの表情を見せる。
ただしデュオ自身も物分りの悪いレクサスにいい加減痺れを切らし始めた。
「最後の忠告だ。
事実を受け入れる受け入れないは、お前自身が決めることだ。
ただ、忘れるな。
過去が無くなれば、お前が守れなかった命、守ろうとする命全てが意味を成さなくなる。
後は勝手にしろ、俺は知らん。」
レクサスは一瞬立ち止まった。
全てが意味を成さなくなるという言葉が重く圧し掛かかる。
ただ、事実を受け入れるにはもう少し時間が欲しかった。
彼はアランに肩を貸しながら再びリト達の下へ戻って行く。
デュオの言う事を認めたくは無い一方で、認めざるを得ない現実を前にして苦しんでいた。
「過去に行ったら、この世界へは帰ってこれますか?」
アラン達の背中を見つめていたデュオにアンジェリーナが尋ねる。
デュオは彼女に笑顔を見せた。
「あのバカ共と違って、お嬢ちゃんも中々賢いようだな。
ただその質問には、答えることができないんだ。
ドラゴンロードを倒した後の事は誰にもわからない。」
アンジェリーナは察した、きっと何かを隠していると。
しかし追求したところできっとデュオは答えないだろうと思った。
その答えが良かろうと悪かろうと、今までの事実とこれから起ころうとする事実は変わらない。
彼女にはそれがわかれば十分だった。
あとは行動に移すだけだと。
アンジェリーナの様子をシューナはじっと見ていた。
そしてアンジェリーナがこれからの答えを出しシューナを見つめると、彼女達はひとつ頷いた。
「じゃぁわたし達も帰る。このシーフ倒してくれてありがと。
あ、ごめん、部下だったんだよね。
でもおかげでわたしたちが救われたのは変わらないから。
行くよ、アンジェ。」
いつものようにシューナは去り、アンジェリーナは一礼して彼女の背中を追った。
それを微笑みながら見送るデュオ。
そして黙って聞き続けていたジックがむくりと起き上がる。
「いいのか〜?」
「ああ」
「ま、お前がそう言うなら俺は構わないよ、ルタニアスはうるさそうだけどなぁ。
でも3日間も何しろって言うんだよ…。」
「やる事ならあるだろうが。」
そしてデュオは部下だったシーフの遺品を纏めだした。
遺体は強烈な電磁波によって蒸発している。
ジックも彼に倣った。
部下のナイフが月明かりに照らされ、眩い光を反射させている。
「済まなかったな…。」
「何が?」
「お前じゃない、こいつにだ。」
「ああ。…まぁデュオに倒されたのなら本望じゃないか? こいつも。」
月明かりを反射するナイフの煌きはデュオ達を照らした。
その光は邪念から解放された感謝の念と、これからの事に対しての希望の念を彼等に与えていた。
喜々とする月光を反射させたナイフは、とても華やかな美しさをいつまでも奏でていた。