お留守番の時間-1
ピアニストが出て行くと、主人に従順な触手たちが、四方八方から再び姿を現し、いっせいに役割を務め出した。
「はく!?んぐっ!」
触手は全身に絡みつき、ずりゅずりゅ蠢いて敏感な部分をまさぐる。
当然のように、可愛らしい口に自らをねじ込ませ、ドロドロに溶けかかっている二本目のチョコを引き抜き、そこにも押し入った。
「んぅーーっ!!!」
みっしり肉の詰まった弾力のある触手が、淫猥な音を立てて内臓をかき回す。
そのたび、奥にたまっている固い金平糖が敏感な柔肉をひっかいた。
ごりごり子宮口を刺激され、大きく見開いた瞳から涙がボロボロ溢れる。
入り損ねた他の触手たちは、先端の形を人間の口のような形に変え、愛撫を開始した。
とろけた女体を味わうようにゆっくり舐めまわし、肉の花弁の一枚一枚を別の触手が咥え、同時に舐めすする。
「ふぅっ!ん、く……ぅんーーっ!!!」
白い額に玉の汗が浮かぶ。
触手たちに弄ばれるグレーテルには、もう外の振動や物音を気にする余裕もなかった。
チョコ混じりの甘い蜜を噴こぼし、それを触手にすすられ、快楽を貪りながら狂ったように喘ぎ叫ぶ。
人外の魔物に犯される屈辱も、壊れそうなほどいっぱいに咥えこまされる痛みも、全て快楽になっている。
年齢よりはるかに幼い外見ながら、いっぱしの娼婦以上に悶える姿は、倒錯的な卑猥さを振りまいていた。
感情など持たぬ触手たちは、そんな痴態にも興奮する事はないようだが、代わりに疲れも飽きもしらないようだ。
ひたすら責め抜き、喘がせ、鳴かせ続ける。
快楽に息を詰まらせながら、無限にも感じる甘苦しい快楽拷問を繰り返した後、やっとピアニストが戻ってきた。
怪我こそ負っていなかったが、今日もひどく疲れているようだった。
青ざめた顔で触手たちを下がらせ、糖蜜の網をあっさり引きちぎると、失神寸前でビクビク震えているグレーテルを、覆い被さるように抱きしめた。
「いなくなったよ……大丈夫……もう大丈夫だから……」
涙でベトベトのグレーテルの頬へ、ピアニストは愛しくてたまらないとばかりに何度もキスを降らす。
半開きの口端から流れている唾液も舐め取り、さくらんぼのような小さい唇に、深く口づけた。
脱力しきった身体で、グレーテルはされるがままキスを受ける。
甘い舌で口内をひたすらねぶられ、交換した唾液が唇の合間で銀の糸橋を作る。
二人とも色素が薄く、髪も肌も白いのに、瞳だけは黒曜石のような漆黒だ。
快楽に蕩けた黒と、情欲にたぎった黒の視線を合わせながら、夢中で互いのキスを貪った。
唇を合わせたまま、ピアニストは糖蜜の網をあっさり引きちぎった。
自由になった細い足が抱え上げられ、ドロドロの膣口に新たな熱が押し当てられる。
ズプリと、先端が埋め込まれた。
「あっ」
熱い塊が一気に貫き、そのまま激しく打ち付けられる。
「ひゃんっ!あ、あぅん!はぁっ!!」
刺激にグレーテルが仰け反り、外れた唇から高い声が響いた。
細い腰がガクガク痙攣し、また絶頂が近い事を教えてしまう。
「これ、お兄さんの身体なのにね。お兄さんの入れられて嬉しいんだ?」
「は、はぅんっ!」
「ヘンゼルも、君の事が大好きだよ。……僕と同じ位ね」
「あ、あ……おにいひゃ……すきぃっ!あ、ああっ」
もっとも感じる部分を的確に突かれ、散々絶頂を味わった身体を、さらに打ちのめされる。
泣き叫びながらすがりつく少女の耳元に、嘲るような笑い声が囁かれた。
「――でも、彼の身体は僕のものだ」
白濁に溺れかけていたグレーテルの心臓に、冷たい氷水が一筋注ぎ込まれる。
「あ……」
反射的に鍵へ伸ばされた手は、あっさり捕われて頭上で一まとめに押さえ込まれた。
「ねぇ、僕が嫌い?」
「き、きら……んぁぁああっ!!」
「しっかり答えてよ。嫌いな僕に、大好きなお兄ちゃんの身体で犯されるってどんな気分?」
「ひっ、あ、んぁ、やめっ!」
「またイきそう?そっか、気持ち良いんだね。中身なんかどうでも良いんだ?」
「や、やぁ!!わ、わらひ……イ、イきたくな……―――――っっ!!!」
甲高いソプラノが上がった。
腰が大きく跳ね上がり、全身を激しく痙攣させ、埋め込まれた楔をしめつける。
一瞬遅れ、低く呻いた悪魔の雄から、熱い飛沫が胎内に吐き出された。
どろどろベタベタになった部屋を魔法で片付けた後、『ピアニストの片割れ』金の鍵でピアノの蓋を開き、鍵盤を愛撫しはじめた。
音色は少し開いた窓から外へ流れ出し、白濁の濃霧へ変わっていく。
薄れ始めていた霧が、また十分な濃さで館を覆ったのを確認して、窓を閉める。
さすがに疲労困憊で、ただでさえ青白い顔はさらに生気を失って紙のように白い。
ソファーに崩れこみ、一息ついた。
遠い霧の彼方から、悔しそうな咆哮がかすかに聴こえた。