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お菓子の家のおかしな双子
【ロリ 官能小説】

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グレーテルの時間-1

 悪魔の奏でる音色が霧のようにたゆって頭へ流れ込む。

 気付いたら私は、身体も髪も綺麗にされ、清潔な寝巻きを着てワタアメの布団に横たわっていた。
 でも、身体はくたくたに疲れていて指一本動かせないし、さっきから流れてくるピアノの音色で、頭もぼんやりする。

――今日もお兄ちゃんを取り戻せなかった。

 ここへ捕らわれから、今日で何日目?
 ずいぶん長い時間が経ってる気もする。

 立ち込める霧に包まれた、昼も夜もないこの館で、悪魔の奏でるピアノが、私の頭にも霧をかけ、何もかもを曖昧にしていく。

「愛してる」

 いつのまにか、ピアニストがベッドの傍らにしゃがみこんでいた。
 ぼんやり霧のかかった頭で、とても優しく抱きしめられるのを感じた。 
 穏やかに唇が重なり、舌が絡まる。飲み下しきれなくて口から零れた甘い唾液を、そっとしなやかな指で拭われる。

「グレーテル、愛してる愛してる愛してる」

 大好きなヘンゼルお兄ちゃんの顔をした悪魔が、うわごとのように呟く。

「君が望むなら、世界中のお菓子だってあげる」
「いらない……お兄ちゃんを返して……」
「だーめ」
「きらい……アンタなんか……だいきらい……」
「……それで良いんだよ」

 とびきり甘い微笑を浮かべ、悪魔は私の額にそっと口づけた。

「さぁ、もう眠ったほうが良い。霧が深くなってきた」
「ピアノ……」
「ん?」
「起きたらまた、聞かせてよ……」

 今にも白濁しそうな意識のまま、袖口を掴んで訴えた。

 この悪魔が奏でるピアノは、なぜか私をとても安心させる。
 私を惑わす魔性の音色なのに、聞かずにいられない。
 ピアニストは、クスリと笑って頷いた。

「ああ。良い子で眠ったらね……おやすみ」

 ゆっくり髪を撫でられ、意識が霧に支配されていく。

 ここにくる前も、来てからの事も、すべてが霧にまかれて曖昧なの。
 時々、白い夢の向こうに、私とお兄ちゃんが並んでピアノを弾く光景が薄っすら見える時がある。

 おかしいよね?
 口減らしに捨てられた貧しい子が、ピアノを弾いてたなんて…やっぱり気のせいだわ。

 眼が覚めたら……今度こそ、大好きなお兄ちゃんを取り返すんだから!



ーーーーーーでも、お兄ちゃん……ねぇ、あなたはどんなひとだっけ?





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