戸惑い-1
言葉を失う葵に背を向けて斉条は歩き出した。寂しそうに視線を落とす葵は孤独感を感じてしまう。
その様子に気が付いた斉条は・・・
「出過ぎた真似を・・・葵様申し訳ありません」
「斉条が言われることは間違っておりません・・・一つの場所に長く留まることは避けなくてはいけませんね」
「・・・・・」
(葵様を悲しませたいわけじゃない・・・たとえ王といえども感情のある人間だ。誰かに固執することなく・・・と言ってしまったら、私や蒼牙とて同じこと。お傍にいることさえ叶わないだろう・・・)
複雑な想いを秘めているのは葵も斉条も同じだった。広間に一人になった葵は窓に近づき、王宮の片隅にある孤児院を見つめた。
(いつか、人の問題は人が解決しなくてはいけない・・・。むやみやたらに王が手を貸してはいけない・・・)
「私に出来る事って・・・一体何があるの・・・・?」
月の光が冷たく葵を照らしていた・・・。