THANK YOU!!-4
「・・・え?」
急に聞こえた声に、瑞稀は下げていた視線を上げた。そして、自分に声をかけてくれた人物を映した。
その人物は、瑞稀が式中に肩を借りたポニーテールの女子生徒だった。
その子は、瑞稀の目の前に立ち首を傾げて瑞稀の顔を覗き込んでいた。
よく見ると、目の高さも合わせていてくれているようだ。
「あ・・いや、そういうわけじゃなくて・・」
「そうなの?」
「えっと・・こんなに短くしたの久しぶりで慣れなくて・・」
女子生徒の目線から逃れるように顔をずらした瑞稀はたどたどしく答えた。
首の後ろをさすりながら、別の言い訳。
そのことを知らない女子生徒は、瑞稀の顔を覗き込む為に屈めていた体を戻した。
瞬間、長いポニーテールが動きに合わせて揺れる。
女子生徒は顔を綻ばせた。
「そっか、良かった。さっき、式中ずっと首揺らしてたからそれで痛いのかなって思ったから声かけてみたんだけど。」
「あ・・そなの・・?だ、大丈夫。」
ストレートに言葉を伝えてくる女子生徒に、瑞稀は戸惑った。
なにせ、この子が瑞稀にとって、中学初めて話した人。
自分から話しかけに行くことが出来ない瑞稀にとっては、とても貴重な人間。
クラスメイトだしこれからも、出来れば話せるようにしたい。そう思ってしまうが故に言葉を選びすぎて、逆に思った事を伝えられない。
優しそうな子だし、もしかしたらこれから話せるようになってくれるかもしれない。
そう願ったら、傷つけないようにしないと・・。そう思った。
ただでさえ、拓斗を拒絶してしまったあとなら・・。
「あ、あの・・さっきは・・ありがとう。ゴメン、なさい」
「ん?あぁ、起こしたこと?全然気にしてないから大丈夫だよー。」
「あ・・それもだけど・・肩、借りたことも・・」
「んー?気にしてないよ!確かにあれは眠くなるしねー。仕方ないよ、人間の本能って奴。」
小学校の時には考えられない程おどおどしている瑞稀に対し、女子生徒は淡々と言葉を繋いでいく。こういう、さっぱりした性格なんだろうか。