誰にでも等しく・・・-1
王宮の門をくぐると蒼牙と偉琉が飛び出してきた。
小さな姿に気が付いた葵が馬からおりて両手を広げる。すると、少し背の大きくなった蒼牙が葵の胸に飛び込んできた。
「あおい、おそい・・・どこに、行っていた・・・?」
目に涙をためた蒼牙と、激しく尻尾をふりまとわりつく偉琉の頭をなでる。寂しがらせてしまったことを申し訳なく思いながらも、どうしても助けたい人達がいたことを話した。
聞き分けのよい蒼牙は葵の枕に顔を埋めながら葵の話に聞き入っていた。(こんな時間まで私の帰りを待っていてくれたのね・・・)
葵の優しい手が蒼牙の頭を愛しくなでる。目を細めて甘えるように葵の胸元にしがみつく葵牙を抱きしめながら彼が眠るまで傍を離れなかった葵だった。
その様子を見つめていたのは斉条だ。彼は音もなく寝室から出てゆく。
しばらくあとに葵が広間へ戻ると、いつものように優しい斉条があたたかい飲み物を用意してくれている。
安心したように椅子に座ると、宿で借りていた着物姿のままの葵に斉条は微笑んだ。
「あの町は独自の風潮があるようですね。着物姿の葵様も素敵です」
「本当に・・・、人も町も素晴らしいところでした。明日お礼をいってお返ししなくては・・・」
「・・・・・」
「彼に会いに行くのですか・・・・」
「・・・え?」
思わず顔をあげると斉条は笑みを消して葵を見つめていた。
「私は・・・彼にとても興味があります。正義感が強く、皆に信頼されていた・・・」
大和の姿を思い出して葵は目を細めた。
「大和のような人間がこれから皆を導くリーダーとなってくだされば・・・」
トン・・・
音をたてて斉条がティーカップを置いた。
「・・・貴方が期待しているほどの男ならば・・・貴方の力がなくても民をまとめることができるでしょう」
「斉条・・・いいえ、それだけではありません。私が・・・民と交流を持ちたいと願っているんです。彼らが何を見て何を考えているのか・・・もっと知りたい」
「なら・・・彼でなくともよいでしょう?誰かに肩入れするのではなく、他の町を見てまわればよいのです。王として摂理を守ってくださるのならば私は何も言いません」