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新・ある季節の物語
【SM 官能小説】

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(秋編)-2

彼とは仕事の関係で、これまでも何度か顔を会わせたことはあった。私は男には関心がないと
自分では思っていたけど、キムラさんだけは違った…。いつ頃からか彼を意識するようになっ
た自分が正直言ってよくわからなかった。


でも、私みたいな男まさりの女にキムラさんが振り向くはずなんてないわ…と、あたりまえの
ように思っていた。


ところが、三ヶ月前、仕事の関係でキムラさんに会ったとき、いつもの作業服ではなくて、
珍しく白いブラウスとスカートを着て、私が彼の前で初めて眼鏡を外した瞬間だった。

キムラさんの視線が、かすかに変化したような気がする。

彼は、私の顔をしばらくじっと見つめ続けたあと、まるで自分の恋人をあらためて見るように、
私のからだに視線を這わせたのだった。あんな風に男性に見られたのは初めてだった。


キムラさんとの夜の食事のために、午前中に近くの美容室を数年ぶりに訪れた。そのとき、
美容室の店長から言われた言葉が、私の頭のどこかにふわりと残っていた。

「あれ、ミツエさんって、眼鏡を外すと素敵ですね…びっくりですよ…いえいえ、お世辞じゃ
ないですよ…失礼ですけど、四十三歳の年齢には、とても見えませんね…それに、お肌もしっ
とりしていて、まだお若いですね…」

真顔で、若いなんてさらりと彼から言われたときは、恥ずかしいくらいだったが、こうして鏡
であらためて眼鏡を外した自分の顔を見ると、まんざらでもないわ…なんて変な気分になる。



一時間も前に、私はキムラさんとの約束の場所にたどり着いていた。

青山の落ち着いた雰囲気の高級レストランで、ワイングラスを手にし、キムラさんと向かい合
う自分がぎこちなかった。いつもは、せいぜい近所の女友達と焼鳥屋さんで、ビールを少しだ
け口にする程度だ。

キムラさんはポロシャツ姿のラフな格好だったが、着こなしには、どこまでも優雅さがあらわ
れていた。それに比べて私は、持ち合わせの数少ない洋服の中から、地味な紺色のワンピース
を着て、おそらく別れた夫との結婚式以来身につけたことのない、褪せた真珠のネックレスを
していた。もちろん、いつもの眼鏡を外し、コンタクトだった。


「いや…驚いたな…びっくりだよ…やっぱり、ミツエさんは、僕が思ったとおりの女性だった
…とても素敵だよ」

にこやかに笑うキムラさんにそう言われると、からだの芯から火照るような恥ずかしさに包ま
れた。

その後、キムラさんには何度となく食事に誘われ、交際を始めたのだった。



そして、あの夜… 


私は女としての自分の何かを久しぶりに予感していた。誘われた場所は、高層ホテルの最上階
のスイートルームだった。


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