嫉妬-1
ドキドキと鳴りやまない心音に大和は呼吸を乱していた。今までに感じたことのない異性に対しての感情だった。
見目の麗しい大和は町の女性たちから好意を寄せられること数知れず・・・だがどの女性にも大和は心惹かれることなく今まで過ごしてきた。
「大和・・・?」
いつまでも手を離さない大和に葵は背後から声をかけた。大和は葵へと向き直り、目の前の少女を見つめた。彼女の1つ1つの動作すべてが愛らしく、その声さえも飲み込んでしまいたい衝動にかられた。
「葵さま・・・・」
大和の切れ長の美しい目元がわずかに細められ・・・長いまつげが影を落とした。
「・・・・・」
葵は自由になった手で、大和の目元に触れた。驚く大和に葵は、
「大和、お疲れではありませんか?目が赤い・・・」
彼が火事の熱にあてられたのでは、と心配した葵は大和の身を気遣った。
「・・・っっ」
葵の伸ばしたその手を大和は勢いよく掴んだ。ぐっと顔を近づけて、驚く葵の背に手をまわした。唇が重なろうとしたその時・・・・
「おーい大和、王様を探しにきたっていう王宮の使いがきて・・・・・」
今まさに唇が触れそうになっている二人の元に大和と特に親しいあの友人と・・・漆黒の衣を纏った長身の男が立っていた。
「おぉっ・・・!!大和・・・っ!!
すまん、ちょっと間が悪かったな・・・」
大和の恋路を応援している彼はすまなそうに襖をしめようとした。すると、その襖に手をかけ長身の男は部屋の中へと入って行った。案内してきた大和の友人の制止しようとする声さえ耳に入っていないようだ。
「葵様・・・探しましたよ。
貴方が祈ってくださったおかげで居場所がわかった・・・さぁ、帰りましょう」
「斉条・・・心配をかけました、ですが・・・彼は私のせいで怪我をしてしまい・・・火を放った者もまだ探し出せておりません。落ち着くまで私は彼らと共に・・・」
「奇声をあげてカタナを振り回していた男なら・・・先程取り押さえられているのを確認いたしました。カタナには血がついており、目撃者の証言からもほぼ間違いないようでした」
安堵した葵は小さくうなずき、大和へ視線を戻した。
「大和、ゆっくり休んでください。
明日・・・また来ますね」