再会-1
聞き覚えのある声に葵は席を立った。
「今の声は・・・もしかして・・・・」
広間から王宮の門まではかなり距離がある。蒼牙にはまるで聞こえておらず、偉琉はわずかに耳を動かした程度だった。
「・・・どうか、した?」
葵の顔を覗きこむ蒼牙に葵は微笑んだ。
「お客様がいらっしゃったみたい」
蒼牙の手を引いて声のした門へと歩みを進めた。扉を開くと・・・
すらっとした長身の、美しい黒髪をたなびかせた青年の姿があった。
「久しぶりですね、斉条・・・」
斉条と呼ばれた青年は葵の姿に目を細め・・・
「葵様・・・貴方に会いたい一心で来てしまいました・・・」
以前よりもわずかに大人びいた彼は片手を胸にあて、うやうやしく頭を下げた。
「訪ねてきてくれたこと、とても嬉しく思います。よくここがわかりましたね?」
(彼がいた村からはかなり遠く、王宮が出現して間もないこの場所を一体どうやって・・・?)
色々と葵は不思議に思うところがいくつもあった。その様子に気が付いた斉条は、
「貴方がおじい様のもとに来て下さったとき、そして戻って行かれた時・・・同じ方向へ姿を消したので・・・辿って行けば会えるような気がして・・・・」
「・・・私が姿を見せたのはつい先日のことなんです、斉条・・・会えてよかった・・・」
葵は遥々訪ねてきてくれた斉条の手を優しく握りしめた。斉条と葵を見比べていた蒼牙が葵の陰から出てきた。
「・・・さい、じょう?」
真ん丸な愛くるしい目が斉条をとらえた。
「・・・あっ・・・葵様、この子はまさか・・・葵様の・・・・」
「い、いえ・・・っ!!
昨晩保護した身寄りのない子です。蒼牙と命名させていただきました。そしてこの子は偉琉と言います」
葵は目線を合わせ、蒼牙と偉琉の頭を優しくなでた。
斉条も身をかがめ彼らと目線を合わせた。子供相手でも礼儀の正しい斉条は握手を求めた。
「初めまして、私は斉条と申します。葵様が忘れられず・・・こうして訪ねて来てしまいました」
物腰の低い斉条に、蒼牙は喜んでその手をとった。偉琉も大喜びして尻尾を振っている。
(斉条・・・)