業-ごう--1
「訪ねてきてくださったこと、とても嬉しく思います・・・ですが、あなたがここに来た理由は別にありますね」
葵はじっと目の前のドイルという名の男を見つめた。葵の美しく澄んだ瞳がすべてを見透かしたようにその男を追い詰める。
「・・・な、なんのことですか・・・な?」
冷や汗と脂汗をぬぐいながら男はたじろいだ。
「私が先日、とある村を訪れたのは・・・どうしても聞き逃すことの出来ない心の声を聞いていたからです」
「・・・こ、心の声・・・・」
「怪我や病を治す力・・・それを得て、民から高額な金銭を、と考えているのではないですか?」
「・・・め、めっそうもありませんっ!!!
わ、わた・・・わたしどもの店では万病に効く薬も・・・どんな怪我をも治す薬もございますすっすっ!!!」
葵は小さなため息をひとつ。
その列の後方にいる水色の髪の青年へと視線をうつした。彼は蒼牙と同じく、靴を履いておらず・・・さぞ美しいであろう髪も艶を失っており、その青年のようにひどく疲れた印象をうけた。ただ違和感のある整えられた服装が、見た目だけを意識して用意させられたように思えてならなかった。
「万能薬があるのならば・・・後方の彼の足の傷を治してあげてください」
葵は瞳の温度を下げてドイルを睨む。
葵が送った視線の先の水色の髪の青年をみやったドイルは・・・
「なっ・・・!!
たかがっ!!水持ちの奴隷に高い薬など使うわけ・・・・・っ」
「・・・・・」
「ド、ドイルさまっ!!!」
隣にいた彼の従者が葵の冷たい視線に気が付き、ドイルへ注意を促した。