平等に愛すること-1
葵のベッドで穏やかな寝息をたてている小さな蒼牙と子犬。その寝顔をみて微笑ましく思う。しかし・・・他にも孤児がいるとしたら・・・
(この子だけを特別扱いは出来ない・・・きっともっと他にも寂しい思いをしている子供たちがたくさんいる・・・)
「皆が幸せになるためにも・・・まだまだやらなくてはいけないことがいっぱいあるんだ・・・」
空に浮かぶ優しい月を見上げ、葵はこぶしを握りしめた。
――――――・・・・
朝食を作り、まだ眠っている蒼牙と子犬の頭をなでていると・・・にわかに外が騒がしくなっていることに気が付いた。
部屋の窓から王宮の外を見回す。近くの権力者なのだろうか・・・。
白馬にまたがり、頭には美しい羽の帽子と、その身には上品な刺繍の正装をまとっている男たちと、その従者らが列をなしていた。
葵は眉を下げてその姿を静かに見つめていた。まさかと思ったが、やはり王宮の門へと向かっているようだ。まだ人馴れのしていぬ葵は大勢の人の前へ出ることを戸惑った。
(・・・民と共に生きると決めたのだから・・・しっかりしなくては・・・)
間もなく王宮の門が叩かれ・・・葵はひとりその姿を現した。
葵の姿をみるなり、その一行から歓声があがる。
そして、葵の目の前には最も高級そうな衣をまとった中年の男が馬から降りて片膝をついた。
「お初にお目にかかります麗しき王よ・・・私は隣街の豪商、ドイルと申します」
ドイルと名乗った男は、ギラギラした目付きで葵の髪の先からつま先までを舐めるように目で追っている。
小太りなその男の指には大きな石がはめられた指輪、苦しそうな太い首元には上質なシルクのスカーフ。そしてブローチ、脂ぎった金色の髪は下品に固められている。
だが、葵は嫌な顔をせず礼儀ただしく挨拶した。
「わたくしは葵と申します。"世界の意志"の命により、この世界の王の地位を賜りました」
「おぉっ!!
やはり貴方様がっ!!
小さな村に翼のある王が降臨されたと巷では大変な騒ぎになっておりましてな!!!」
つい先日の東条や斉条の一件のことだろう。騒ぎになってしまったことを申し訳なく思いながらも葵は顔をあげた。