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19歳
【ラブコメ 官能小説】

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後奏-1

――後奏


 遠ざかっていく、隊長の後ろ姿を見送ってたら、妙なことに気付いた。

(アレ? ホントに何ともないゾ…)

 確かに、ちょっと気まずい雰囲気ではあったけど、それは、あくまで久しぶりに会った
知り合いに対してのもので、さっき言った“今年の4月まであたしが好きだった男の人”に
対して感じたものではないような気がした。

(どういうコトだ? もうちょっと、何かあると思ってたんだけどな…)

 あたしは、氷を買いにコンビニに入ることも忘れて、しばらくの間、自転車の傍に佇ん
で、首を傾げて考えてみた。
 
 その“何かある”っていうのは、隊長に対して、まだ少し、“吹っ切れない想い”みたいな
気持ちが残ってるかもしれないってことだけど、コンビニの前で隊長に会ったときには、
そういうことを全く感じなかったから、少し拍子抜けしてしまったわけよね。何か、アレ
だけ大騒ぎしたのがバカみたいじゃない、ねぇ? 

 隊長に、“告白”された日から、およそ3カ月くらい、指を折ってキチンと数えてみたら
ちょうど100日目だった。

(あらま…)

 別に、キリのいい数字に驚いたわけじゃないんだけど、何だか意味のあることのように
思えた。久し振りに隊長に会って、何とも感じなかったってことは、つまり、あたしの中
では“終わったんだ”ということをちゃんと確認したわけで、ソレが、キッカリ100日目
だったんだから、ここはもう、記念日にするしかないでしょ? とか。

 じゃぁ、七転八倒もがき苦しんで、あんなに愁いて悩みまくった“隊長への想い”って、
いったい何だったのよ? なんて思っちゃうけど、要するに、あのときの自分とは、違う
自分になってしまったってことよね。もしくは、違う自分になれた、と言うかね。そして
100日目の今日が、その“最終確認日”になったというわけ。
 
 顔を上げて、何となく辺りを見回したら、コンビにの隣にあったヘアサロンの、入り口
に掲げてある看板が目に入った。そこには『Fly away』と店名が書かれてあった。

(ちっとも気付かなかったけど、最近できたのかな? そうだ…記念に髪を切ろう)

 コンビニの前に停めた自転車の、今ロックしたばかりのカギを外して、隣のお店の前へ
停め直し、サロンに入った。
 もちろん初めてだったけど、あたしが髪を切るって言ったら、店員さんが丁寧に好みを
尋ねてくれた。あたしは、高校生のときの髪型を思い出して、そのままを伝えると、注文
の通りのショートカットに仕上げてくれた。

 鏡の前の自分と向き合っていて思った。誰かを好きになったときに、本当に大切なのは
その人への想いなんかじゃなくて、その人との関わりなんだっていうこと。想いっていう
のは、自分だけが抱えていればいいモノで、誰かと分かち合ったりしなくてもいいんだっ
てこと。その人との関係は、時間をかけながらお互いに協力し合って、ちょっとずつ作り
上げていくモノだから、いちばん大切にしなきゃいけないんだ…。

 髪を切ってるときに、こんなこと考えてるあたしって、相当ヘンだよね? あはは。


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