回想Cパート-2
フロントガラス越しに見上げた満開の桜の花が、土手沿いの道にある街灯のふんわりと
した明かりに照らし出されて、それは、とても美しく幻想的な光景だった。
ときおり吹いてくるやわらかい風に舞い散らされる、淡いピンクの花びらを、あたしと
隊長は、しばらくの間、時間が経つのも忘れてぼんやりと眺めていた。
「綺麗だね、桜の花…」
「うん…」
「夜桜見物は、好き?」
「うん…」
「ここは、特等席だね…」
「うん…」
「タツミくんは、僕のこと、好き?」
「うん…」
返事をしてしまってから、隊長が仕掛けた“罠”に引っ掛かったことに気付いた。
「え? あ、ちょ、今のなし、なしっ」
「今さら否定しても遅いんですけど?」
「だって、ほら、隊長に釣られて…」
あたしは、もう耳まで真っ赤だった。かぁーっとなって、何にも考えられなかった。
「そうかぁ、やっぱ、お蝶がにらんだ通りかぁ」
隊長は、半分後ろに倒したシートにもたれて大きく伸びをした。
隊長のことを蝶々さんに相談したことはなかったけど、あたしの様子とか目の色とかで
何となくわかってしまったんだと思う。元々、隠し事が苦手で、心の中がバレてしまいや
すいタイプなんだよね、あたしは。
蝶々さんが言うには、早いうちにキッチリ話をしといた方が、お互いの為にいいんじゃ
ないかっていうことらしい。それも、人づてにではなく、隊長本人から直接に聴いた方が
いいだろうって。いったい何のことだろう? と、そのときは思った。
シートを元に戻すと急に真顔になって、隊長は、あたしの方に向き直った。
「タツミくん、ちょっと長い話するけどいいかな?」
隊長の“告白”が始まった。