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19歳
【ラブコメ 官能小説】

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回想Cパート-1

――回想Cパート


 大学の入学式を翌日に控えた土曜日、新しく借りた部屋の近くに流れている川の土手沿
いにある小さな空き地に植えられた3本の桜の木は、どれも満開だった。
 その夜は『きらめき』の月に1度の定期ライブがあって、あたしも、もちろん張り切っ
てステージに(観客として)臨んだ。

 この頃の『きらめき旅団』は、活動3年目に入って、1年くらい前に、あたしが初めて
聴いたときとは、音楽的な特徴が随分と変わってきていた。
 リズムセクションをコンピュータに自動演奏させて、生のドラムとの掛け合いをさせた
り、歪ませたギターの音色が、グラデーションっぽく電子音に変化していくような演出を
やったり、蝶々さんが、ベースの他にキーボードも担当するようになったりした。
 奇妙な音色のギターを入れるとか、隊長の声にエフェクトをかけたりとか、元々テクノ
やトランスっぽいところはあった『きらめき』の音だけど、その傾向が、どんどん強まっ
ていってる感じだった。
 あたしは、音楽の作り方については全くシロウトだし、そういう変化がどういうところ
から来るのかについては、ちっともわかんなかったのよね。ま、仕方ないんだけど。

 ライブが終わったあと片付けを手伝ってたら、隊長に声をかけられた。ちょっとふたり
で話したいことがあるから、反省会が終わるまで待ってて欲しいって。メンバー間の取り
決めで、きっかり30分で切り上げることになってて、すぐに終わるからって。
 話って何? あたしは、もう、どうしていいか、わからなくなってしまった。頭の中は
パニック状態。胸のドキドキが止まらなくなって息苦しいほどだった。
 それまで、誰かから「好き」と言われたことはあったけど、こっちから好きになったこ
となんてなかったから、色んなことの歯車が狂いっ放しで。つまり隊長は、あたしの“初め
ての相手”だったってことよね。

 その日も隊長は車で来ていたので、また、いつかみたいに、あたしを助手席に座らせて
部屋の近くまで乗せて行ってくれることになった。
 今夜のライブどうだった? とか、大学に入ったら部活動は何やるの? とか、色々と
話を振ってくれていたみたいけど、あたしは完全に上の空で生返事ばかりしていた。何か
こういう改まった話をする直前の雰囲気って、どうしても気まずくなるよね?
 あたしの部屋は、ライブ会場から、そんなに離れてない場所にあったので、しばらく車
を走らせると、すぐに部屋の近くまで行き着いた。隊長は、川沿いの土手に桜の木が植え
られた小さな空き地を見つけると、そこに乗り入れて、桜の花の下に車を停めた。


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