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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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王の誕生-1

今思えば・・・赤ん坊の葵が何者かと会話することさえ不思議なものだ。



『・・・汝はこの世界をどうしたい・・・?』






(誰・・・・?)






『・・・我はこの世界の意志
汝を捨てた両親が憎いか・・・?』






(いいえ・・・寂しいけれど、わたしのためにパパやママが苦しいのはいや・・・そのようにしなければいけない何かがあるなら・・・)






『・・・恨みはないか?・・・』






(だいじょうぶ・・・
きっと、これから変えてゆけるもの・・・・)






『・・・己の欲を捨て他を想う心、か・・・我は汝に賭けてみよう・・・・その心のままに、恨み無く希望を持ち・・・この世界を導いてみせよ・・・・・』






(導く?・・・・一体どうやって・・・・)






『・・・汝を唯一無二の存在へ・・・人界の王となり世界を導くのだ・・・』






(人界の王・・・?)






『・・・我は永遠に汝と共に・・・
世界を愛し、すべてを愛せ。
例えその命が尽きようとも、汝の使命に終わりはない・・・』






(みんなが笑って暮らせるような世界に・・・悲しみに目を閉じてしまうひとがいなくなるように・・・・世界に・・・・愛を・・・・っ!!)






激しい光が立ちあがり、葵と"世界の意志"との契約は成立した。何もなかったその場所には幻のような残像がやがて物質化し、見たことのない立派な王宮へと変化した。






『・・・汝が王として一人で立ちあがれる年月が来るまで・・・今しばらく眠れ・・・・』






心の中から聞こえてくる優しい声に、葵は安堵し、目を閉じた。







それからというもの、葵はほとんどを眠ったまま過ごした。隣にある杖の輝きは衰えることなく、葵を優しく包み込み・・・ひたすら成長のときを待っている。






そして・・・・






葵が16の歳をむかえた日・・・・・。






『・・・目覚めよ葵・・・
時は満ちた。人界の王として君臨し、世界を導くのだ・・・!!』






ぱちっと目をあけた葵は静かに頷くと、傍で輝く杖に手を伸ばした。そして、その杖の輝きは一層激しさを増し、葵の体を純白の衣が包む。そのまま光は背中へと移動し・・・王の証である真っ白な翼が葵の背後で大きく広がった。






葵は強く杖を握りしめ、頭上へと掲げる。慈愛の光が空と大地に広がり・・・絶対的な王を得た人界は葵の加護のもと、目覚ましい成長をとげるのである。







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