契〜あの日の約束〜-2
―…
「おはよ〜」
「あ、おはよ!!杏里」
「…何?」
親友の梨華が何やらニヤニヤしている。
「吉田くんが呼んでるよ〜!!」
「吉田?」
(これはもしかして…)
「杏里ちゃん、俺と付き合ってくれないかな?」
(やっぱり…)
「あ〜…えっと…無理です。ごめんなさい」
「え?!な…何で?」
「いや…何でって言われても…」
(どんだけナルシスト?フラレる事を考えてなかったみたい。自分の顔、鏡で見た事あんのかな?)
あたふたして、必死に説得をしようとする吉田。
「あたし、貴方の事知らないし…」
(アホらし…)
「じゃあ、これから知ればイイじゃん!!」
(何、コイツ。)
吉田の顔に焦りの色が見える。
「ね?付き合ってくうちに分かるよ」
(近づくなし!!嫌〜…キモい!!)
「本当に困るんですけど…」
「お願い!!付き合って!!」
―グイッ
「やッ!!」
(痛ッ…くない?)
ギュッと目を閉じていた杏里には、何が起きたのかさっぱりわからなかった。
「コラ!!吉田。杏里、嫌がってんのわかんない?」
目を開けて飛び込んできたビジョンには、ねじふせられる吉田と彼を押さえつける早川くんの姿。
「痛い痛い!!早川!!技かけんなよ!!」
「杏里、先に教室行きな。」
「え…あ、うん。ありがと!!」
(早川くんって、確か柔道部だったよね…。マジ助かった!!)
正直怖かった杏里は、少し小走りで教室に戻った。
「杏里♪」
「あ〜…梨華。」
教室に戻ると、梨華が笑顔でおでむかえ。
「どうですか??吉田くん♪梨華的にはイケてるよ♪」
杏里はうんざり顔で答える。
(ミ-ハ-め!!)
「却下。」
「え〜!?何で?!カッコいいのに!!」
(どこらへんが?!)
「無理。ナルだし。力で押さえつけようとしたんだよ?かなり無理。」
「なんだ。そ-か…」
少し悲しそうな梨華を見て、心が痛んだ。
(悪い事言っちゃったかな…)
別に人の趣味を悪くいいたいわけではない。今の私は、千里しか見えないから…。もしかしたら、吉田は一般の人から見ればカッコいいのかもしれない。私には、そうみえなかった。ただ、それだけだから。
(謝ろう…)
「梨ッ…」
「やっぱり吉田くんより早川くんよね♪♪」
(おっとぉ…!!)
ミ-ハ-魂、強し!!笑
「早川くんはナルじゃないし、柔道やってて礼儀を知ってるし!!礼にはじまり、礼に終わるみたいなぁ〜♪顔もカッコいいじゃない?何より優しいもん♪」
「…ほぉ〜」
(前言撤回。笑)
梨華を置き去りにして、杏里はさっさと自分の席に着いた。
―…
「杏里」
放課後、帰ろうとした杏里を早川が引き止めた。
「早川くん。」
家に着けば千里に会える、とウキウキ気分な杏里。声のトーンが心なしか、高くなる。
「あれから…どう?吉田。」
話によると、何やら朝から気になっていたようだ。
「ううん。何もないよ。今朝本当にありがとうね。早川くんいなかったら、あたしヤバかったよ〜」
「いいや。全然いいよ。何もないならよかった。」
「うん。」
机の中を一通り片付け、杏里は席を立つ。
「よし。じゃあ、あたし帰るね。」
「あ、杏里…」
「…ん?」
早川の顔が少し赤くなった。
「俺さ…、今日部活ないんだけど、よかったら家まで送ろうか?」
「え!!いいよ〜」
(そんな事まで…そんなイイのに…)
「でも、方面一緒だし…また吉田きたら危ないし…」
(吉田か…ソレは嫌。)「う〜…」
「変な奴きても、倒せる自信あるよ!!」
早川くんはホラッといいながら、力こぶを見せる。
(千里に似てる…)
「ふふッ。何それ〜?」
「え?!笑う所!?」
「だって…腕細いぃ〜」
「なッ!!失礼な!!触ってみなよ!!かなり筋肉あんだから!!」
「きゃ〜(笑」
強制的に手を筋肉へおかれた。
(…わっ。筋肉硬ッ。)
見た目よりも筋肉がある。
「な!!」
「…うん。あたしより細いのに…。」
「うわ〜…それショックやわぁ。10年柔道やってきてんのに…」
「へぇ。すごいね。ッて!!ちょっとぉ!!」
「腕プニプニですやん。」
「さッ触らないで!!くすぐったい!!にッ肉ゆれるから!!」
「女の子って何でこんなに細いんだろうか…」
「え?」
(にッ…肉ッ!!)
「力入れたら折れてしまいそうやんなぁ」
「早川くん…」
(女の子扱いされてんの?あたし…)
「あ!!俺何してんだろ!!ゴメン!!」
「え、ううん…」
(ビックリしたぁ…)
二人の距離は思いの外近く、早川はびびって少し離れた。
「俺…こんなんやけど、多分頼りになる…と思う。」
「うん…」
「だから、杏里を送らせてくれんかなぁ?」
「…うん。いいよ。」
(男の子の困った顔って可愛い…)
「じゃあ…帰りますかぁ。」
「はいッ」