THANK YOU!!-2
こういうところが、好きなんだろうな。
そう、小さく呟いた。
それは瑞稀に聞こえていないと思って。
「・・誰が?」
「え!?」
誰の言葉か理解する前に、瑞稀が自分の顔を覗き込んでいた。
正確には、瑞稀の方が若干身長が低いので見上げた状態で首をかしげていた。
その無防備な表情に、一瞬息を呑んだ。
だが、聞かれた以上、答えない訳にもいかない。
「だから・・拓斗君が好きな・・」
「・・・え・・・・?」
「え?」
菜美の答えを聞いて、瑞稀の思考回路が止まった。
瑞稀は、顔を俯かせて震える声を出す。
「・・・拓斗・・好きな人・・いるの?」
「は?え・・」
それは明らかにアナタのことでしょうが・・と思った菜美は、どう答えようか迷った。
だが、聞かれていることだけを素直に答えようとも思い、頷いた。
瑞稀はますます、顔を見せないように地面を見つめる。
その様子に、菜美はある一つの可能性が芽生えた。
「(まさか・・気づいてないの・・!?拓斗君が瑞稀ちゃんを好きだってこと・・!)」
そう考えると、秋乃があれだけ拓斗と瑞稀について色々ちょっかいを出していた理由が分かった。まさか、ここまで鈍いとは思っていなかった。
「・・・・瑞稀ちゃん・・アナタ・・」
菜美がその事実を告げようとした瞬間、瑞稀が思いっ切り顔をあげた。
今にも泣きそうな・・寂しそうな表情で。
「そっか!拓斗、好きな人いたんだね!あーじゃあ・・悪かったかな・・ずっと私のところいてもらって・・」
「・・瑞稀ちゃん・・?」
「まあ、もう中学生になるんだし当たり前かあ!」
瑞稀の心無い言葉が、口から出される度に菜美は驚愕して、眼を見開いていく。
そして、瑞稀の両目から涙が一筋流れて、言葉が濁らされたとき・・菜美は言葉を告げた。
「・・・瑞稀ちゃん・・気づいてないの・・?」
「・・・え・・?」
「アナタ・・泣いてるよ・・?」
「・・・!!」
思わず、右手で頬を抑えた。そこには、冷たい水。
瑞稀がゴシゴシとそれを拭って涙の意味を弁解しようとした。
が、菜美はそれを止めた。
「瑞稀ちゃん・・まだわかってないの・・・?」
「な、・・に・・を・・?」
「・・・・アナタが・・拓斗君を好きだということ・・・」