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Dr.COOL
【その他 官能小説】

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Dr.COOL-3

『静かにしなさいっ!ここをどこだと思ってるのっ!他の患者さんに迷惑でしょ!!』
扉が開いたと同時に響いた声。二人の動きが止まった。
『あなた達、彼のお見舞いに来たんでしょ?だったら少しは病人をいたわりなさい。傷に障るでしょっ!』
厳しい表情で二人に説教する女医。まるで教師と生徒だ。
『とにかく、面会時間は終了してるから、今日のとこはここまでっ!』
『・・・・はい。』
初めて見たおとなしい二人。いとも簡単に手玉に取るなんて、この人は只者じゃない。
『わりぃな、宏樹。今日は帰るよ。あとこれ、着替えとお見舞い。退屈だと思って雑誌とか入れといたから。』
和哉さんが紙袋を渡してくれた。
『二人とも、すいませんです。』
『じゃ、また来るから。その時までに、話決めといてくれよっ!』
そう言いながら、二人は部屋を後にした。残された二人。女医が大きなため息をつく。
『賑やかなのは悪くないんだけど・・・・でも一応、他の患者さんもいるんだから、少しは周りに気を遣って欲しいわね。』
『すみません。今後、気を付けます・・・・』
『あっ、あなたに言ったワケじゃなくて・・・・ただ最近、若い人達に多いのよ。少し周りを気にしてくれればイイだけであって・・・・』
少しうろたえた表情もイイ。思い切って、聞いてみる事にした。
『あの・・・・名前、教えてもらえませんか?』
『私?中邑久美子。外科担当の医師よ。』
『もしかして、新人サンですかっ!?』
『失礼ねぇ。まだ20代なんだから。そんな老けて見えるかしら・・・・』
『え・・・・い、いや・・・・
あまりにも堂々としてるから、キャリア長いのかと思って・・・・』
『実はね、この病院に来て、初めての手術が村井さんだったの。ホントはさぁ、すっごい緊張してガチガチだったんだから。』
相手からの返事が次々と出てくる。退屈していた俺には、とても楽しい空間になった。
『ところで、お仕事の方はイイんですか?』
話の流れで出てしまった一言。もしかしたら、戻ってしまうかもしれないのに・・・・
『今?もう非番だから大丈夫。それに、担当の患者さんのとこにいる分には問題ないから。』
その返事を聞いてホッとした。
『実は、退屈だったんですよ。話相手も、遊ぶモンも無かったし・・・・』
『じゃイイわよ、私でよければ。これも治療の一環だから。』
発言が非常にプロフェッショナルだ。しかし、その表情から不快感は一切感じられない。それから俺達は、一時間ほど会話を楽しんだ。俺の仕事の事、彼女の病院での事、二人から強制された合コンの事。明るい笑い声が病室に響いた。俺は手術痕の痛みも気にならずに笑い、話していた。打ち解けてからはお互い、【宏樹君】【久美子さん】と呼び合っていた。
『ほんっと、仕方ない上司よねぇ・・・・』
『ただ、業務命令ですから、声だけはかけてみますよ。じゃなきゃ、クビになるかも。』
『で、宏樹君も参加するの?主役だから、当然かな?』
『俺はどうしようかなぁ・・・・あっ、久美子さんも来ますか?』
『えっ、私っ!?私はぁ・・・・』
その時だった。彼女の持っている緊急連絡用のポケベルが鳴った。
『!!!!ごめん、宏樹君。今日はここまで。急いで行ってみるね。もう消灯時間が近いんだから、休みなさい。』
最初に会った時のクールな表情に戻った。総合病院には頻繁に急患が入ってくる。人手が足りない場合は、常に24時間体制と変わらない。
『あの・・・・楽しかったです。また話してくれますか・・・・?』
俺が声をかけると、彼女が振り返り微笑んだ。
『もちろんっ!無事、患者さんを助けたら、また来るからネ。』
そう言って、俺の病室を出た彼女。俺は彼女の事を気にしながら、眠りについた・・・・

―それから五日が経った。彼女はあの時の急患に付きっきりらしい。と、担当の看護士に聞かされた。搬送された時には心肺停止状態で、蘇生術を施された。一命は取り留めたものの、余談を許さない状態が続いてるとか・・・・
その間、俺の方は術後の経過も良好で、手術痕もあらかた塞がり、腸の活動再開の合図である、ガスも出た。しかし、看護士や代わりの医者が回診しては来るが、彼女は顔を見せてくれなかった。
《久美子さん、大丈夫かな。ムリしてるんじゃないだろうなぁ・・・・》
そして、時間は無情にも経過していった・・・・


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