夕-11
「やぁだ、陽ちゃんじゃない〜気付かなかった♪」
「あ、ああ……久しぶり……つうか、凄ぇ変わったな……」
中腰のまま、美夜から目が離せなくなっている陽太を、朝陽が睨んでいる。
「んふ♪可愛くなったでしょう?」
「うん……凄ぇ可愛いってえ!」
惚けた顔で答えた陽太のセリフが悲鳴に変わった。
「痛ぇって、朝陽っ!」
朝陽が陽太を睨みながら、腕をギリギリと捻っている。
「色目使ったワケじゃねぇって!ちょっと見とれただけで……いっ!?」
言い訳すればするほど力が増す。
「確かに、美夜は、可愛くなったけど、モトカノに、デレる彼は、見たくない、のよねっ!」
言葉の途中途中で力を込めて言い切った朝陽は、最後に全力で腕を捻り上げて手を離した。
「いってっ!」
陽太はかなり痛かったらしく、涙目になっている……ご愁傷様。
「夕ちゃんのアドバイスなんだぁ♪ね♪」
僕の背中に抱きついたままの美夜は、肩口から顔を出して僕を覗き込む。
僕はにこやかに微笑みを返しつつ、内心では押し倒したくなる衝動と戦っていた。
「今更、勿体無い事したって思っても遅いんだから」
美夜は陽太にべーっと舌を出して僕にべったり甘える。
「確かに……勿体無ぇ事したかも……」
陽太は小さい声で呟いたのだが、朝陽が聞き逃すはずがない。
「陽太!!」
「ごめんなさいっ!」
口は災いの元ってね……憤慨して席を立つ朝陽を、慌てて追いかけようとした陽太に、僕は声をかけた。
「あ、陽太」
「んあ゛?!」
呼び止められて律義に止まる陽太に爽やかな笑顔を向けた後、僕はおもむろに彼の胸ぐらを掴む。
「なっ……んぐっ?!」
グイッと陽太を引き寄せ、彼と唇を重ねた僕を見て美夜が嬉しそうな歓声をあげた。
「きゃあっ♪」
「え゛?!」
美夜の歓声に振り向いた朝陽が、目の前で起こっている出来事に絶句した。
「んっんんーー!!?」
双子の兄の突然の奇行にどう対応していいか分からずに、陽太はわたわたしている。
たっぷりねっとり陽太との口づけを堪能した僕は、ちゅっぽんと唇を離した。