帰郷-2
次の日の昼過ぎになっても、俺はベッドでグースカいびきをかいていた。
羽衣が女友達と会っていたように、結局俺も友達に連絡して飲んで管を巻いて、家に帰れば午前3時だった。
「……広瀬、起きて!」
聞き覚えのある声に目を覚ませば、羽衣の顔が目の前にあった。
「あれ、なんでお前俺の部屋にいるの?」
「もう、今日は一緒に遊ぼうって言ったでしょ!
朝から電話してるのに出ないから家まで迎えに来ちゃった」
「あ……、そうか。わりい、今から準備するか……」
そう言って寝ぼけ眼のまま身体を起こし、彼女の方を見やると思わず固まってしまった。
「……何、そのカッコ」
羽衣は紺色のブレザーに深緑のチェックのスカート、さらには紺色のハイソックス、いわゆる俺達の母校の制服を身にまとっていたのだ。
「へへ、どう? 化粧も控えめにしたし、意外と違和感ないでしょ?」
羽衣は立ち上がるとクルッと一回転して見せた。
それに合わせてストレートの髪がふわりと浮かんだ。
「ア、アホだ……」
ベッドの上でそのまま固まっていた俺は思わずそう呟いた。
「また、そういう傷つくことばっか言う! 今日はこのまま高校に行くよ」
「は?」
「今日は学校おやすみだけど、熊谷先生が部活で学校いるんだって!
久しぶりに会いたくて」
熊谷先生とは、羽衣の所属していたバレー部の先生だ。
ハスキーボイスでゲラゲラ下品に笑う40歳くらいのおばさん先生なのだが、やたら羽衣と仲良しだった。
「それはいいんだけど、そのカッコで……?」
「うん、もちろん!」
得意満面に笑う羽衣にクラクラ目眩がしてきた。
「そのカッコは頼むからやめてくれ、みっともねえから」
「もう、どうしてそんなことばっか言うのかなあ。あたし、そんなに似合わない? 高校生の頃とそんなに変わってないつもりなのに。
ちゃんとあたしを見てから文句いいなさいよ!」
そう言われ、ため息を吐きながら俺はまんじりと彼女の制服姿を見た。