夏向き-7
「おなかすいたぁっ
「何か食べ行く？
「え〜っ め〜ん〜ど〜く〜さ〜い〜
「げっ またピザとるのかよぉ
「いいじゃん おいしいんだからぁ
「まぁ いいけどさ
「ほらぁ 早く電話ぁ
「もう シャワー どうすんだよ
「あたし浴びてるから ナオくん 注文して
「なぬぅ オレは後回しかよ？
「だって ナオくん さっき浴びたでしょ？
「オレだってカピカピのまま飯食うのやだよ
「あたしの方が おなか減ってるんだよぉ
「ハラ減ってるヤツが注文すりゃいいじゃん
「え〜っ セコい〜 注文ぐらいしてよ〜
「ああ もう しょうがないな 貸せよっ
「わ〜い ナオくん やっさしい！
「今日だけだからな！
「今日も でしょ？ あたしテリヤキＤＸね
「何だよ それ〜 こないだも食ったろ？
「いいじゃ〜ん 好きなんだからぁ
「はいはいはいはい わかりましたよっ
「なによぉ その言い方ぁ ムカつくぅ…
行為の後も とてもやかましいふたりだった
× × ×
別の日 夕方 バイトから帰ってきた ナオ
玄関の扉を開けた途端 むっとくる熱気が…
（何じゃこりゃ あいつ居ねぇのかよ？
何故かバスルームの方から聴こえてくる歌声
♪ Fly away now Fly away now Fly…
荷物をその場に置いて慌ててそちらへ向かう
「ユイ おまえ 何やってんの？
全裸に 水中眼鏡をつけて 冷水シャワー
耳には でっかい ヘッドホン（防水？）
♪ Fly away now Fly away now Fly…
まだ歌っている ナオが見えてるはずなのに
床にはコンビニで売ってるロックアイスの山
「こんなに氷買ってきて どうすんの？
ようやく歌をやめて ヘッドホンを外すユイ
「停電だって まったく冗談じゃないっての
「なんで停電？ 電気代ちゃんと払ってるぞ
「違うわよ 近くで 工事があるんだってさ
「なんだ それなら もうすぐ電気くるだろ
「それがさ明日にならないとダメなんだって
「なぬぅっ じゃ どーすんだよ この暑さ
「だからぁ あたしだって 困ってんでしょ
「それで その氷？
「そ 今日は アイスプレイよ！
「何だよそれ？
「何？ ナオくん やったことないの？
「だから 何だよ？
「んー もー わかってるクセに…
あれ？ 何となくユイの顔周辺に漂う違和感
「あ…ユイ…髪切った？（けっこう短い）
「まぁね…（急に真顔になる）
「どした？ 心境の変化？
「失恋１００日記念（小声）だったりして…
「何？ シャワーがうるさくて聞こえないよ
「…えーと…夏向き…そう…ナツムキよ！！
「ふーん いいんじゃない？
「ありがと ナオくん えへへ
ユイは とても嬉しそうに 笑った…
（了）