第1話 年増の女-2
この若い男は、まだ女を知らずに、自分で慰めるのが日課だった。
この日も、年増の女を思いながら満たそうと決め込んでいたのだ。
恐らく、年増の女は入口の隣にあるトイレに向かったと思い、その間にでも満たそうと、若い男はジーンズのジッパーに手を掛けた。
しかし、その時だった。
ガチャッ・・・・・・
年増の女はなぜか、入口のドアの鍵を掛けた。
男女二人だけの密室が出来あがった瞬間でもあった。
その一部始終を見ていた若い男は、まるで固まったかのように動きが止まった。
再び腰をくねらせて、席に戻ってくる年増の女を固唾を飲んで見ているしかなかった。
「ふふ・・・邪魔が入ったら困るでしょう?」
年増の女は、余裕の笑みを浮かべて、再び若い男の隣に座った。
その距離は、お互いの腰が密着するほどで、若い男を戸惑わせていた。
「あ・・あの・・・お店の方は、まだ大丈夫なんですか?」
「別に構わないわよ。だって・・・住み込みだから、後はここで寝るだけよ」
「ここで、寝るって!?」
「そう・・・二階には大きなベッドもあるのよ。何でしたら・・・お客様も、少し休まれて行かれます?・・・ふふ・・・・・」
「い・・いいえ・・・僕なんかとても・・・・・・」
「あら、それは残念です事・・・朝までたっぷりと時間がありますから、色々と楽しめるかと思っていましたのに・・・・・・・」
年増の女はそう言いながら、誘うように黒い脚を組んでいた。
それは深いスリットから肌蹴ており、悩ましくも露わになっていた。
思わず若い男の視線は、テーブルの下を捉えて離さなかった。
「お客様、どうなされました?・・・テーブルの下に、何か落とされたのかしら?」
「い・・いや、その・・・ママの脚が綺麗だから・・・つい・・・・・」
「あらあら・・・お客様の様なお若い方が、このような年増にも興味をおしめなされるなんて・・・相当酔ってなさりますわね」
「そんな・・・僕はそんなに酔ってなんかいませよ。本当にママの脚が綺麗だから・・・・・・」
「ふふ・・・お客様も物好きなお方ね・・・それでしたら、このような年増で構いませぬのなら思う存分見て下さいな」
年増の女がスリットをたくし上げると、組んだ脚は、腰のラインまで露わになった。
それはまるで、ショーツなど履いておらずに、ただ黒い脚だけが伸びているように見えた。
年増の女は、この美しいラインを演出する為にも、ショーツはTバックタイプを履いていた。
さらに、黒いパンティーストッキングは、切り返しが見えぬようにとオールスルータイプを履くほどのこだわりようだった。
まさしくそれは、男を陥れる、『黒い誘惑』と言っても過言では無かった。
その黒い誘惑に誘われるかのように、若い男はジーンズを再び膨らませながら、視線を落としていた。
「あら・・・もしかして私を女として見て下さるの?」
年増の女は、若い男のジーンズの膨らみに気づいて、それに対して尋ねた。
「こ・・これは・・・違うんです。す・・すみません・・・つい・・・・・・」
若い男は、年増の女の言葉の意味がすぐに分かり、慌てながら手で覆い隠した。
「ふふ・・・そんなに慌てなくとも良いですわよ。なんでしたら・・・お触りになられます?」
「えっ!?・・・触るって・・・ぼ・・僕がですか!?」
「ええ・・・それでお客様が満足なされるのなら、お好きなように構いませぬわ。それとも・・・やはり年増はお気に召せませんか?」
「い・・いいえ・・・そんなつもりは・・・・・・・」
しばらく若い男は、年増の女の膝元を眺めていた。
理性と欲求の狭間で、葛藤していたのだ。
明らかに目の前の女は、母親ほども離れた年増の女・・・・・・その理性を抑えきれずに、若い男の欲求は、膨らんだジーンズの下で苦しんでいた。
やがて、若い男の手は震えながら、年増の女の膝元めがけて動いた。
その瞬間、ジーンズの膨らみが露わになり、年増の女はそれを、唇を舌で回しながら物欲しそうな視線で眺めていた。
シュルル・・・・・・
徐々にと近づく中で、けたたましいナイロンの摩擦音を室内に響かせながら、年増の女は脚を組変えていた。
それに誘われるかのように、若い男の手は急速に迫っていた。
ポンッ・・・・・・
「よお・・・拓真。来週の件は大丈夫だよな?」
二週間ほどたった、とある大学の広場。
ベンチに座りながら携帯を眺めている男に、もう一人の男が後ろから肩を叩いていた。
「何だ、お前かよ・・・・・・」
ベンチに座る男が振り向くと、顔見知りの男だった。
この二人は、同じ大学に通うサークル仲間だった。