THANK YOU!!-3
「・・私たちは・・皆違う学校だもんね」
「・・うん」
クッキーの生地にチョコチップを混ぜ、型抜きしてバットに入れオーブンへ。
一息ついた瑞稀たちはリビングで紅茶を静かに飲んだ。
瑞稀は祖母の頼みで受けた絽楽学園に一発合格、秋乃も第一希望だった相模が丘中等高校に合格した。というか、瑞稀のクラスで受験を受けた者は全員合格を決めた。
拓斗はというと、瑞稀に話していた通り受験せず、三中・・第三中学校に進学した。
つまり・・バラバラ。
「・・こんなに愛着湧くとは思わなかったから離れがたいね」
「秋乃のその言い方。なんかペットと離れるご主人みたいだけど・・」
「あー、確かにそうかもなあ。さすが瑞稀。いい例え持ってくるねー」
「嬉しくないんだけど!?」
「安心して。ウチのペットは瑞稀じゃない、鈴乃だから」
「どこが安心だよ!?」
先ほどまでのシリアス雰囲気をブチ壊・・じゃない、吹き飛ばすかのように続く会話は、この一年で一番縮まった二人の心の距離を象徴するかのようなモノだった。
振り返ってみたら、色んな事があった。
秋乃が転校してきて。
倉庫に閉じ込められて。
大怪我を負って倒れて。
初めて自分の為に泣いて。
誰かの存在に頼りたくなって。
親友の心を傷つけさせてしまって。
大切な人に怪我を追わせてしまって。
まだちゃんと菜美と話したわけでない瑞稀は、どうして自分に襲いかかろうとしたのか理由が解らなかった。
知りたいという気持ちはあるのだが、菜美の方から避けられてしまっていた。
自分が何かしたなら謝りたい。
ぽつりと漏らした言葉。それは、隣に居た秋乃に聞こえることはなかった。
否、聞こえる訳がない。
意識が違う方へ向いていたのだから。
「・・・どうしたの」
「・・瑞稀。なんか焦げ臭い」
「・・本当だ・・。・・・・!?まさか!?」