THANK YOU!!-11
「・・・っ・・帰るっ!!」
拓斗の登場で、居た堪れなくなった菜美は瑞稀のマンションがある方向へ走り出した。
そのあとを追おうとした瑞稀だが、秋乃に止められた。
「良いよ。止めときな。」
「秋乃っ!でもっ!!」
「良いから。」
「だって秋乃のこと言われたんだよ!?」
納得がいかない瑞稀を、秋乃は手を握りながら少し微笑んで言った。
「良いよ。ウチのこと、気にしてくれてありがと。もう、大丈夫だから。」
「秋乃・・・」
その優しげな微笑みと言葉に、興奮していた気持ちが落ち着いた瑞稀。
改めて、拓斗へ視線を向けた。
「・・ゴメン。いつから・・居たの?」
「・・お前がキレた辺りから近くには居た。結構、びっくりした」
「・・・・」
「・・瑞稀。ウチ帰るね。また明日」
黙ってしまった瑞稀に、秋乃は優しく言った。
思わず「え!?」という声を出してしまう瑞稀。
引きとめようとしたが、既に拓斗を追い越し歩いていた。
「・・・秋乃・・。」
「・・・気を遣わせたな」
ボソッと拓斗が言った言葉で、瑞稀は遠くに見える親友と目の前に居る大切な人を見比べ、真っ赤になる。
それを見た拓斗は笑い出す。
まるで先ほどのことなどなかったかのように・・。
瑞稀と別れた秋乃は、瑞稀の言った言葉を思い返しては笑顔になった。
有難う。それしか言葉がなかった。
自分の心を救ってくれてありがとう。
皆まで言うのは恥ずかしいから、ただ一言。有難う。それだけ言って、拓斗と二人にさせる。
それだけで、充分。
秋乃は小さく笑うと、夕焼けが映える空に向かって大きく伸びをした。