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「未来日本戦記」
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「未来日本戦記」-5

別に世直しには何も抵抗はない。面白そうだし、この三人でなら可能性がある。しかし…。
「俺は誰かの下について働くのは好きじゃねぇんだ」
「…そうか」
心はその場から立ち去ろうとする。
龍は心の背中に声をかけた。
「俺よ、目標が出来た」
心が止まる、振り返り、龍に尋ねた。
「どんな?」
口の端を持ち上げて言い放つ。
「全国制覇、日本中の連中を俺の舎弟にする」

「良い夢だな」
心は笑って言った。
龍はそんな心に向かって、片手でお金を表すジェスチャーをする。が、どうせ見えないと思い、やめた。
「そこでだ、お前も形だけ俺の舎弟になんねぇか?その見返として、俺もお前のしたい事を手伝ってやる」
龍は拳と拳をぶつけ、ごつっと鳴らす。
心は龍の言葉に反応するそぶりを見せない。しかし、聞こえてはいるはずだ。
「どうだ?」
心は考えたすえ、こう返した。
「俺は構わない。しかし、相方がなんというか分からない。そいつの答えを聞いてからで良いか?」
「相方?」
「すでに世直しを共にする約束を交わした相手だ」

龍は「そいつに会おうか」と言って、漆が帰って来てからすぐ心の案内の元、街へと歩き出した。

街の大通りをしばらく歩き、また路地裏に入る。
「ここだ」
心が一つの建物を指差す。そして、漆を肩車した龍が尋ねた。
「相方って…」
「女だ」
言い終わらぬうちに心が答えを返す。
龍がそう判断した理由、心が指差した建物は「舞い部屋」だった。
「踊りで世直しできるのかよ」
龍が毒を吐く。そんな龍に、心は言い切った。
「可能だ」
そして建物の扉を開けた。
その瞬間、扉の向こうから扇が飛んでくる。
それを苦もなく片手で取る心。
「客だ」

そう言って、扇を投げ返した。
「入ってくれ」
「おう」
中に入ろうとして、漆を上の梁にぶつけてしまう。
痛みに唸る漆の頭を撫でながら、建物内を観察する。
木製の床張り、木製の壁、いかにも日本古来の建物らしかった。
壁に「舞勇無心」と額縁に入った文字が架かっていた。
「ぶゆうむしん?」
「流派の極意だよ」
おそらく舞うための広い部屋の中央に、白い着物を着た女が座っていた。
龍が聞く。
「流派は?」
女が答える。
「戦舞い」
「あー、最近作られた武術の戦える踊りか」
龍は思った事を口にしたのだが、女に不快な思いをさせたようだ。

「踊りじゃなくて舞いだよ」
「そっか、悪い悪い」
素直に謝っておく。
心が奥の部屋に引っ込みながら「茶を入れる」と言った。
それまで三人は、この部屋で待つ事にした。

茶を入れながら心が昔の事を話す。内容は、小さい頃この舞い部屋の当主に拾われ、育てられた事。
そして、部屋の流派の戦舞いを習わず、我流で自分の芸、居合術を極めた事。
龍は、当主の娘だという女に聞いた。
「戦舞いってのは舞いながら戦う武術だよな?男にもできるのか」
当主の娘、舞が答える。
「あたりまえよ」
「だが俺は刀にこだわっただけだ」
心が言葉を付け足す。

「ふーん」
適当な返事を返す龍。しかし、心の話の中で出た「居合術」を心の中に深く留めておく。
(俺が拳法、心が居合、女…舞っつったかな、戦舞いで、漆は…)
龍は漆に「お前は何が得意なんだ」と聞く。
「んー、忍者の家系なんだけど」
「忍者って…ニンニン?」
舞が手を上下に合わせ、指を立てて言った。
「うん、その忍者。ちなみにコレ忍者刀」
そう言いながら、腰にあった二本の短めの直刀を取った。
「忍びの芸は『獅子流』、殺し専門の流派だよ。あ、僕は獅子漆(シシウルシ)って言うから」
龍は漆の頭を撫でながら心に言う。
「さ、本題に入ろうか」

それを聞いて、心は舞に初めて「世直し」の話しをした。
それを聞き終わり、舞は「遂にやれるのね」とぼやく。
「どうだ舞、形だけ舎弟になってくんねぇか?」
しかし舞は…
「はいそうですか。なんて無理ね」
「あん?」
「形だけって言っても、それに見合った力があるかどうか見たい、どう?」
「…ほぉ」
龍は口の端を上げ、口元を歪ませる。
指を鳴らし、言う。
「じゃあいっその事、誰が一番か決めようぜ?」
「話し分かるじゃん」
立ち上がる二人に、心が問う。
「俺と漆もか?」
「あたりまえ」
素早く舞が答える。
「血を流さないなら良いが…」
「えぇ!?」

漆が飛び上がるように立ち上がった。


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