Purple target-10
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―――ザッ、ザッ、ザッ・・・・・
男は悶々としたまま岸壁沿いの小道を歩いていた。
左手には青々とした海が広がり、
右手には露になった岸壁や山肌が所々に見えている。
(・・・少しやりすぎたか)
そう思わずにはいられなかった。
この島に来て遊猟区での狩猟や魚釣りをしつつ、
観光客の中でこれはと思う美形どころを狙い堪能してきたことが、
現在の男の行動に制約をかけていた。
既に4人まで男の毒牙にかかり、“後の始末”まで確実にした。
だが流石に観光客とはいえ女性4人が連続して失踪してしまえば、地元警察も放置しているわけがない。
おかげで島のあちこちに警察の姿を見かけるようになり、
これまでのように自由に狩りをすることができなくなった。
無論銃の携行証は正規のものなので銃については疑われることがないが、
この島に来た理由の半分が雌狩りの為に今更狩猟をする気分になれなかった。
(それに・・・・・)
足下に転がる小石を蹴り飛ばしながら男の脳裏に浮かんだのは、
数日前4人目の獲物を狩り終えた直後の姿を目撃し直後に逃げ去った“黒髪の女”の姿――――
(見られた以上早めに手を打たないとまずいが、それにしても・・・・これまでにない“極上の女”だったな)
4人目の始末をつける前に相手に逃げられてしまった為に、
その女が何者でどこに住んでいるのか観光客なのかすらも分からなかった。
(目撃者でもある、あの女・・・・何とか物にしたいが)
さりとて警察が島のあちこちで姿を見せ始めた以上、目立った活動は憚られる。
(くそっ、何とかならんかな・・・・・ん?)
物想いに耽りながらいつしかある断崖の先端付近まで来ていた男の眼下に、
四方を断崖に囲まれた入り江と白い砂浜が映る。
そして遠目ではあるが、砂浜の上を歩いていく人物に男の視線は釘付けになった。
( !! あれは・・・あの時の女か?!)
男はズボンのポケットから単眼用の携帯望遠鏡を取り出し、右目にあてた。