Wanderer-1
高いビルに囲まれた薄暗い路地で一人の男が新聞を広げていた
三度笠に青と白のマントを羽織りその下はジーンズにシャツ、腰のベルトにはほとんど反りのない刀をさしている
「『行方不明者更に増加!!この2ヶ月で二十人以上か!?』か、やれやれ物騒な話だな」
青年がため息混じりにつぶやいた
「だりぃな…この街素通りしねぇか?ギル」
「馬鹿者、こういう所に賞金首はおるものじゃ」
刀ことギルが説教臭く言い放った
「へー、さいですか」
はいはい、と慣れたように聞き流しながら歩き始めた
「天!!貴様またわしのありがたい話を無視しおって!!だいたい貴様には…」
「あー…」
そろそろ耳でも塞ごうかと思った時だった
「きゃぁぁぁ!!」
ちょうど頭の上から女性の叫び声が聞こえた
声に反応し上を見上げるとちょうどビルから女性が落ちる瞬間だった
「しかたねぇか…」
めんどくさそうにつぶやくと落ちてきた女性を受け止める
「関わるのかの?」
「しかたねぇだろうが見ちまったんだから」
口を尖らせながら受け止めた女性を担いだ
「…あと面白い事が起きるような気もするし」
そう言い笑うと路地裏を後にした
「おとーさん、夕日キレーだね!」
鮮やかな夕日の中五、六歳くらいの女の子が満面の笑みを浮かべながら父親らしい男に話し掛けた
「そうだな…」
そう言うと女の子を抱き上げた
「また見にこよーね!!」
「そうだな、またいつかな…」
父親がそう言った所で目が覚めた
「ここは…」
辺りを見渡すと腰に刀を差した男の姿が写る
「誰!?」
男に対し銃を構えようとした、が
「痛っ」
腕に痛みが走り逆の手で腕をつかむと包帯が巻いてあった
「あなた…私を助けてくれたの?」
「まぁな」
「わしらに感謝するんじゃな」
「か…」
ギルの言葉に女性がギルを指差した
「か?」
「刀がしゃべった!!」
ギルを指差し声をあげた
「刀というな!!わしは世界一の妖刀『ギルガザムネ』じゃわい!!」
「自称だけどな」
ギャーギャー言っているのを無視し男が続いた
「んで、俺がギルの持ち主の『水無月天』だ」
そう言うと水の入ったペットボトルを投げた
「それでも飲んで少し落ち着け」
座りながら天もペットボトルを開けた
「で、なんであんな所に?」
ペットボトルを置きながら聞く
「あんたに言うことなんてないわ…」
そう言い女性が立ち上がる
「おっと、どこ行くかしらねぇが今は…」
「止めないで!!やらなきゃいけない事があるの!!」
止めようとした天に叫ぶと外へ飛び出して行った
「ふむ…若い命、そう死に急ぐ事もあるまいに…」
ギルがため息混じりにつぶやく
「ん?どうした天」
見ると天が床に落ちていた紙切れを拾い上げ見つめていた
「写真…か?随分ボロボロのようじゃが」
ギルが言う
「なかなか年代物じゃな、あの娘の父親か何かじゃろう」
「ふーん」
軽く返事をすると笠をかぶりマントを羽織る
「さってと…賞金首でも探すか」
そう言うと写真をポケットに入れギルをベルトに差した
「わしはお主のそーいう所、嫌いではないぞ」
「さいで…」
返事もそこそこに天も歩きだした
時間はもう夕暮れではあったが高いビル群のおかげで夕日は見えなかった