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Wanderer
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Wanderer-2

その夜、すっかり日も暮れ綺麗な三日月の輝くなか街で一番高いビル『サミジナ病院』
その中を大勢の黒服のいかにもカタギではないだろーなぁといった感じの男達が走り回っていた
「こちらには見あたりません」
一人の黒服がケータイで話している
「すみませんサミジナ様、ネズミが一匹紛れ込みました」
そのケータイの先、ビルの最上階、壁全面がガラス張りという金持ちの最終形態のような部屋でタバコを吹かせていた男がため息をついた
「例の娘ですか…」
と、突然天井の通気口がものすごい音をたて落ちた
「早速お目見えのようです。もてなしの用意を」
「ハッ」
男が黒服に命じるのと同時に通気口から天が助けた娘が降りてきた
「サミジナ…」
娘が怒りに満ちた声でつぶやいた
「父さんはどこ?」
銃口を男に向けながら近づく
「ほぉ?」
男が両手を上げおどけたように肩をすくめた
「そんなもので一体何をするつもりかな」
「…」
娘が真っ直ぐ銃口を男に向けたまま近づく
「父さんを返してくれればあんたが裏でやってる事はだれにも言わない」
銃口が男の額に密着した
「あんたもこんな所で死ななくて済む…」
右手の人差し指に力をいれた時だった
扉が開き一人の痩せた男と黒服が入ってきた
「父さん!!」
そう叫び黒服に背を押されよろよろと床へ倒れ込んだ男に駆け寄った
「父さん、無事だったんだね……!!」
駆け寄り目に涙を浮かべる娘に父親が力無くつぶやいた
「こんな所で…何をしてるんだ…」
「なぜ来たんだ!!」
次の瞬間そう強く叫ぶと娘の銃を奪いサミジナに向けた
「ここは私に任せてお前は早く逃げなさい!!」
「でも父さん私…」
「早く!!」
叫びサミジナを撃とうとした瞬間、父親の体を後ろから別の銃弾が貫いた
「父…さん…?」
娘の目の前で父親が血を吐き倒れた
「やれやれもったいない」
血まみれの父親を前にサミジナがつぶやいた
「すみません」
「しょうがないですね、脳がイカれる前に使えるパーツにバラしちゃってください」
父親を撃った黒服に命じた
「はっ」
短く返事をすると父親の片足を掴みそのまま外へ出ていこうとした
「嫌だ!!」
そう叫び父親にすがりついた
「なんで…なんで父さんなんだ!!他の…他の人だっていいのに…」
目から涙が溢れる
「私には、もう父さんしかいないのに…嫌だよ!!一人にしないで!!」
返事のない父親に向かって力一杯叫んだ
「ちっ…ピーピーうるせぇなぁ」
サミジナがタバコに火をつけつぶやいた
「お前の親父は『社会』を動かす役に立つんだぜ?もっと喜べよ」
嫌みな、そして残忍な笑みを浮かべ言い放つ
「サミジナ…」
涙を浮かべたままサミジナを睨み付けた
「ふざけんな…お前なんか…お前なんか殺してやる!!」
そう叫ぶとナイフを取り出しサミジナに掴みかかった
しかし次の瞬間黒服の拳が腹部にめり込みその場に倒れ込んだ
「くぅ……」
そして倒れ込んだ娘の髪を乱暴に掴みあげた
「知ってるか?この社会を動かすような『地位』『金』『才能』を持った奴なんてのはよ、一握りしかいねぇんだ」
髪を掴んだまましゃべりかける
「そいつらが病気なんかになったとき、俺はその命を救う力になる。お前の親父がそいつらの目や腕や内臓になるんだ」
「うぅ…」
目から大粒の涙がこぼれる
「おいおいどうした?さっきまでの勢いは」
「サミジナ様ぁ、そいつはもう意識はあまりありませんぜ?」
サミジナはさらに続ける
「いいか?お前らちいさな歯車ってのはなくなったって『社会』は動く、だがな、大きな歯車ってのは簡単にゃスペアはみつからねぇ、だから使えなくなる前に俺が修理してやってんだよ」
サミジナがそこまで言った時だった
「じゃぁ一人の女にとっての『大きな歯車』は奪ってもいいってのか?」
そう聞こえた瞬間分厚い合金製の扉が蹴り飛ばされた


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