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新・ある季節の物語
【SM 官能小説】

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(春編)-5

一枚目、二枚目… そして、三枚目の正位置のカードが本命になる。


そして、ゆっくりとカードを開いたとき…



 ………



彼の占いをやってから一年が過ぎた…。

近くの公園の桜も、あのとき彼と初めて出会ったときと同じようにすっかり散り始めている。
そして、小さな葉の芽が可愛らしく息吹き始めていた。


…ずっと、この場所で占いをやっていたあなたのことを、遠くから見ていました…よかったら、
ぼくとつき合っていただけませんか…


一年前、彼の占いをした二週間後の日曜日に、突然、彼に誘われ、この公園のベンチにふたり
で並んで座った記憶が懐かしく甦ってくる。あのとき、彼が初めて私を誘った、はにかむよう
な言葉が、今もまだ私の心の中にあざやかに残っている。それ以来、ずっと彼とつきあってい
る。


久しぶりに彼と訪れた懐かしい公園で、あのときと同じようにふたりで並んでベンチに座る。


「リサコ、結婚しないか…」

彼は桜の小枝の先にある、眩しく澄みきった青い空に向かってふいに言った。

私は、その言葉に小さく頷いた。そのとき吹いてきたさわやかな春風の香りを、まるで彼の
心のように胸いっぱいに吸い込んだとき、彼は私の手を強く握ってくれた。


自分を占うタロットは、一年前のあのとき以来、やっていない。なぜなら、あのとき占った
カード以上のいいカードを、私は決して開くことはないと思ったから…。


あのとき開いたカードは、相愛と結婚… そして、私の幸せが春に訪れることを示すカードだ
ったのだ…。


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