投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

新・ある季節の物語
【SM 官能小説】

新・ある季節の物語の最初へ 新・ある季節の物語 3 新・ある季節の物語 5 新・ある季節の物語の最後へ

(春編)-4

それは、ある日曜日の昼下がり… 

私はいつものように商店街の一角でタロット占いをやっていた。
占いの仕事が暇なときは、私はネットのSM官能小説なんて読むことが多い。SMクラブで長
くM嬢をやっているせいか、ふつうの官能小説よりSMものは好きな方だ。

お気に入りは、投稿小説サイトに掲載される、「谷 舞子」という新人作家のSM官能小説だ。
少し風変わりなSM小説なので、最近はこの人の小説に夢中になっている。それに、私は、
彼女が書いているブログ「谷 舞子のSM官能小説雑記帳」の愛読者でもある。どんな女性な
のか一度会ってみたいなんて思っている。


近くの公園へ続く桜並木の小枝が、急に吹いてきた春風に揺れる。すでに散りは始めていた桜
の花びらが、一瞬、紙吹雪のように宙に舞い上がり、春の霞んだ青い空に運ばれていく。

お昼どきなのか、商店街の人通りが途絶えたとき、あまりに暇なので、私は久しぶりに自分自
身の占いをやる。開くカードが、なぜかいつもとは違っていた。

…えっ、ほんとうかしら…

何度やっても、同じ絵柄のカードがでる。どうせ、あたりっこないわ…と、ため息をついたと
きだった…。


「今、空いていますか…よかったら、ぼくの結婚運勢を占ってもらえませんか…」

不意に声をかけられ、見上げた人は、はにかむような優しげな笑みを浮かべたハンサムな男性
だった。背の高いその男性は、年の頃は私とあまり違わない感じだ。紺色のスーツをスラリと
着こなし、日曜日というのに仕事なのか、黒い鞄を手にしていた。


いい男だ…。久しぶりにガキやオジサン相手ではない占いだった。


「えっ、ええっ…いいですよ…結婚運勢って…まだ、独身なんですね…」

彼にうっとりと見とれながら、私の胸の鼓動が久しぶりに高まってくる。彼と話をしながら、
舌がうまく回らない。占うのために聞いてみると、彼の誕生日は、私となぜか相性のいいもの
だった。カードを持つ手が緊張しているのが自分でわかった。


あれ… このカードって…。


開いたカードは、私がさっきまで自分を占っていたとき、何度も開いたカードと同じだった。

「すみません…もう一回、やり直しますね…」

あわてた私は、タロットカードをもう一度シャッフルする。彼は、おだやかな視線を興味深そ
うに私の手元に投げかけている。カードを手にする私の指が小刻みに震えていた。



新・ある季節の物語の最初へ 新・ある季節の物語 3 新・ある季節の物語 5 新・ある季節の物語の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前