第1章-4
「でも、まとまったお小遣いを稼ぐのなら、多少は冒険をしないと」
「冒険?」
美紗子は、その甘い話に何かがあると感じたが、10数万円という金額が気になった。
3,4回で10数万円・・悪くないわ、私も欲しい、でも、内容によっては・・
いくらパートで働いても、その時間では到底その金額にはならない。
(それが、3,4回で・・)
「そう、まあ冒険というか、自分の気持ち次第ね」
「そうなんだ、ねえ、詳しく知りたいわ、教えて」
思わず、美紗子は身体を乗り出した。
その美紗子の食いつきに、百合子は驚いた。
「ええ、良いわよ、お友達の美紗子さんですもの、でも決めるは貴女自身だけどね」
「そうよね、それで?」
「うん、じゃあ、言うわね、実は私も或る人から紹介されたのよ」
「そうなんだ」
「ええ、それで、この話は内緒にしてね・・誰にも言わないって」
「勿論よ」
「実は、私は或るお店で時間があるときだけ働いてるの、良いお金になるわよ」
「そう?」
「それはね、男性のお相手をするのだけど、会員制だから安心なのよ」
「男性のお相手って、身体とか?」
「そうね、必ずしもそうとは限らないわよ、楽しいお話しだけでも良いみたいだし」
「へえ、そうなんだ・・」
「お店で待機していて、お客様からの電話があったときに、そこへいって、
出張サービスをするのね」
「えぇっ、それって、いかがわしいこともするんでしょ?」
「駄目よ、そんな大きな声出しちゃ」
百合子は大袈裟に、唇に指を立て(静かに・・)というジェスチャーをした。
「あ、ゴメンナサイ」
「うふふ、良いの、大丈夫よ」
百合子は、笑いながら落ち着いている。
もう彼女は美紗子の心を読んでいた。
美しい美紗子は、美意識が過剰だが、高いマンションを購入して苦しんでいることを。
なんとか、お金が欲しい・・
この美しい自分を、誰が見ても認めるように着飾りたい。
そう思っているのが、百合子には分かるのだ。
何故なら、百合子も美紗子と同じだからである。
つきあい始めてから、敏感にそう感じ取ったからである。
だから、話に誘ったのは偶然ではない。