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濡れた女達
【その他 官能小説】

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第1章-1


美紗子は、夫と苦労して長年に渡り溜めた貯金を元手にして、念願の新築のマンションを購入した。

その場所は市が開発した新興住宅地で、マンションもそこの一角にある。
近くには大型商業施設や病院などがあり、生活圏としては申し分ない。

マンションは高層で、間取りは3LDKである。
3人家族では、この間取りで十分だった。
美紗子のマンションは最上階の10階にあり、窓から眺める景色は壮快である。

駅からはバスで20分ほど乗るが、その近くに来ると緑が生い茂り
近くには新しくできた公園があり、
休日には娘と散歩するのが美紗子の楽しみでもある。
美紗子は公園を娘と散歩しながら言った。

「ねえ、由紀、やっと私達のお家が買えたわね」
「うん、ママ、由紀は嬉しいの、ずっと夢だったから、家が持てるなんて夢のよう」

美少女の由紀は眼を輝かせながら、母親の美紗子にしがみつく。
美紗子はその娘をしっかりと胸に抱きしめた。

そんなとき、彼女は心から幸せだった。
やっと叶った自分たち家族の家なのだ。
借家住まいの時のように、他人を気にしないで、自分たちで自由に暮らせる。

空を仰げば、青々とした無限の世界が広がっている気がした。


美紗子は、30歳を半ば過ぎて、女としての熟れ頃であり、
髪の毛は栗色に染め、長さは肩まである美しい女だった。

彼女は男女共学の女学生の時には、ミスキャンパスに選ばれたこともあり
顔は勿論、プロポーションも素晴らしく、未だにその体型をキープしていた。


それは彼女なりに、自分でストレッチを欠かせずに努力した結果であり、
その年の女に比べ、4,5歳は若く見えた。
風呂場に大きな鏡を付けたのも、美紗子の提案だった。
裸になったとき、鏡の前でポーズをとり、自分の身体をチェックすることは日課だった。

お腹が出ていないか、二の腕は弛んでいないか・・
脚に脂肪が付いて太くなっていないか、等・・・気にする女は、少なくはないだろう。
しかし、それを確実に実行する女はそうざらにはいない。

それほどに、美紗子は自らの美意識を大切にしていた。

(女はどんなに若くても、歳をとっても、気を許したらそれで終わりになる。
だだのオバサンになってしまうわ。
それだけはなりたくない、せめて心まで、若い人には負けたくないの。
女としての気持ちだけは、失ってはいけないのよね・・)

そう思うと、身体が締まり、余分な脂肪までが消えていくような気がした。
それを誰にも言わないが、心の中では自分なりに優越感に浸っていた。


マンションの購入では、いろいろと資金繰りには大分無理をして借金をしたが、
それでも、長い借家住まいからようやく解放されることが出来て嬉しかった。

夫は、長年にわたり、こつこつと働く真面目な銀行員であり、
その仕事ぶりが認められて昇進し、
最近、ようやく支店長に抜擢されたばかりである。



彼は、そんな関係で毎日が忙しく、残業でいつも帰宅時間が遅い。
その支店まではバスと電車を乗り継ぎ、
朝早くから出かけ、バスは最終で、深夜便になるときが多かった。

夫の達哉と自分、そして娘の由紀の3人家族のくつろぎの休日が終わり、
今朝も、早くから美紗子は、夫と娘の為に弁当を作っていた。

いよいよ新しい週が始まると、朝のこの時間は戦争のように忙しく、
夫と高校生の娘を送り出すとほっとする。


夫は食事を終わり、朝刊に目を通しながら熱い茶を喉に運んでいた。
そんな夫を見つめながら、美紗子は言った。

「ねえ、パパは今週も忙しいんでしょう」
「うん、ようやく支店長になったばかりだし、暫くは、忙しくて、
それにこうして家を買ったばかりだし、頑張らなきゃなぁ・・」

「そうね、でも・・あまり無理して身体を壊さないようにね、由紀もいることだし」
「うん」

新聞を読みながら、夫の達哉は相づちを打った。
(ようやく念願のマンションを買って、俺も頑張らなきゃな・・)

仕事を頑張ったお陰で、マンションも買い、念願の支店長になり機嫌は悪くない。
女子の行員にも、一目置かれ気分は晴れやかになる。


達哉は重いカバンを持って、早々と仕事に出かけた。
それから、ようやく美紗子の自由な時間が巡ってくるのだ。


美紗子は、そんな時間に一人で茶を飲みながら、一息つくのが好きだった。
新しい家は香しい木の香りがして、心地が良い。
これが美紗子の長年の夢だった。






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