失恋の夜〜乱れた友情〜-3
『もっしもーし!』
「あ、わたし。愛美だけど……」
『愛美ちゃん? ひっさしぶりー!』
「な、何なの……こんな時間になんでそんなに元気なのよ……」
『ええっ、自分からかけてきておいてそれはないだろ? っていうかさ、元気なくない?テンションめちゃくちゃ低いじゃん。何かあった?』
「優介が元気すぎるだけでしょ……そっちは何かいいことでもあったの?」
『うひひ、あったよ! ほら、こんなに可愛い女の子から電話がかかってきた』
あまりの白々しさに思わず吹き出してしまった。優介はいつもこうなのだ。適当なことばっかり言って、まわりに笑いをふりまいている。なんだか肩の力が抜けて、いままで泣いていた自分が馬鹿みたいに思えた。
「もう、そんなことばっかり言って……まあ、いいや。ちょっと話聞いてもらおうと思ったけど、やめとく。おやすみ」
『ちょ、ちょっと待てってば! 聞くよ、わかった、なんだか知らないけど、真面目に聞くから話してみろって』
「いいよ、真面目に聞いてもらうような内容じゃないんだもん。遅い時間にごめんね」
そのまま電話を切ろうとしたら、待て待て、と優介が心配そうな声で引きとめた。
『気になるだろ? こんな時間に電話かけてくるなんて珍しいし、ほら、その声、完全に泣いてるし。仕事で嫌なことでもあった? あ、それとも彼氏に振られたか?』
図星。どうしてこんなにカンがいいのだろう。
「えっ……と、まあ、そんな感じ……」
『そんな……って、振られたってこと?』
「そうよ、何回も言わせないで。彼から電話かかってきて、他に好きな子ができたって……」
口に出すと、また胸に痛みが走った。大好きな彼の口から、一番聞きたくない言葉を聞いたのだから、無理もない。愛美の沈みきった気持ちとは正反対に、どこか浮かれたような声で優介がはしゃいだ。
『え? ほんとに? そっかぁ、これは俺にもチャンスが巡ってきたかな。うひゃひゃ、今夜は俺が慰めてあげるぜ、ベイビー』
ふざけたような口調にイライラして、愛美は携帯電話を壁に向かって放り投げた。ガツン、と音がして電池パックが飛び出す。もう、どうでもいい。ベッドに突っ伏して、愛美は声をあげて泣いた。