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私の夏
【青春 恋愛小説】

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ブルーシールアイスクリーム-3

 しばらく2人は何も言わないまま、気まずい雰囲気で歩いていた。少ししてふと目に着いたオシャレな店の前でナツくんが歩みを止めた。

「黙って歩いててもしゃーないし、取りあえず店に入って落ち着こか?ここでエエ?」

「うん。どこでもいいよ」

 気まずい雰囲気から逃れられるのなら大賛成。

 扉を開けて店に入ると、圧倒的な音量があたし達を出迎えた。

「あれっ?ナツくん、ここってディスコ(注:20世紀の話です)みたいだよ」

 こんなに騒々しくてお話なんかできるのかな?

「へ〜、ディスコか?折角やから入ろうや、面白そうやし」

 ナツくんは楽しそうな顔をして、強引にあたしを店に招き入れた。

 フロアーに入ると、若い男女が所狭しとひしめきあっていた。熱気を発散する同年代の若者を横目にしながら、空いてる席を探した。

 店の隅っこに二人掛けのテーブルが空いていたので、あたし達は向かいあって座った。

 自分の気持ちがよく解らないまま今日一日頭から離れなかった男の子。

 そのナツくんが大音量のガンガン響く中で、にこやかに目の前に座っている。さっきまで想像だにしなかったことだ。あたし達は一体これからどうなっていくんだろう?

 初めて受けたナツくんの印象は、変な虚勢を張っていてとても悪かった。しかし、その虚勢の鎧を脱いだ彼の心はとても純粋なものだった。あたしはそれに気付いた時は素直にステキだと思った。

 ユーコはあたしのことを面食いって言うけどそれは確かだ。自覚は十分有るし今でもジャニーズは大好き。だから、ナツくんの容姿に惹かれるのも事実なの。

 でも、引っ掛かるのは年のこと。あたしは周囲に対していつも強気でいるけど、本当のあたしはナツくん以上に虚勢を張っているとても弱い人間。それが真のあたしだ。

 あたしの友だちはそれに気付いてくれていて、全部ひっくるめて友だちでいてくれている。とてもありがたい親友たちだ。

 凄く弱い自分を自覚しているからこそ、もしお付き合いをするならば、『ワガママなあたしを優しく包んで守ってくれる』そんな頼りがいの有る人が理想だった。

 今、あたしの目の前に座るこの人は純粋だと思うけど、それはそれでステキな長所だと思うけど、やっぱり年下って頼りないんじゃないかと思ってしまう。

 ねえ、ナツくん。あなたってイザとなったらあたしを守ってくれるのかな…

「昨日はホンマにゴメンな」

 色んなことを考えながら無防備にナツくんを見つめていたのに、唐突にこう切り出されたので少しムッとした。

「ゴメンじゃない!ホントにやらしいんだから」

「やらしいってそんな…」

「あたし、ナツくんてロマンチックで可愛いなあって見直してたのに、なんであんなことしたん」

「なんか子供扱いされてたみたいやから、既成事実作ってハートを掴もうとしたんや」

「はあ?何それ?そんなことで靡く女の子おらんよ」

 あたしに否定されて慌てて言い直した。

「うそうそ、ホンマはナッちゃんの横顔が余りにも可愛かったから、ついつい我慢でけんようになってしもてん」

 ドキッ!そんなストレートに来られても困る…

「反省してるん?」

「してま〜す」

「かるっ!軽すぎる!いまいち信用でけへんなあ」

「今度は限界まで我慢しま〜す」

 限界って…

「ねえナツくん、一体あたしのどこがいいの?」

「やっぱり可愛いとこかな、他にもあるけど」

「年上だよ」

 あたし達の年代での一つ違いはとても大きな違いだと思うんだけど、ナツくんはそう考えないのかな?

「うん、そうやけど、ナッちゃんにはそんなこと関係ない感じがするんや」

「どういうこと?」

「どういうたらエエかな?ナッちゃんて、なんか『放っとかれへんオーラ』があるんや」

「何それ?」

「そうやなあ、一言で言えば危なっかしいねん。この子はオレが守ったらなアカンと思えてくるねん」

 ドキンッ!



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