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氷炎組曲
【ファンタジー 官能小説】

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君を称える言葉が見つからない-5

 ***


 風呂場で一度抱いた後も、まだ足りなくてベッドへ押し倒し、さんざん貪った。
 魔法灯火の柔らかな光が、疲れ果てて眠っているサーフィをぼんやり照らす。
 その身体は、ヘルマンのつけた赤い痕でいっぱいだ。
 サーフィの身体から、すっかり自分の痕跡が消えているのを見たら、執着じみた想いが沸きあがって、 熱心にそこかしこへ印をつけてしまった。
 考えてみれば、こんな風に痕をつけるのも、サーフィが初めてだ。
 
「サーフィ……」
 眠っている彼女の耳元へ、小さな声で囁くが、そこでヘルマンの言葉はとまってしまう。

 ヘルマンは、サーフィを愛している。

 とてもとても愛している。

 彼女だけが特別で、どうだって良くないと思うのは、サーフィだけだ。
 もう、昔のように割り切って他の誰かと寝る事はできないだろう。基準がすっかり変わってしまった。

『後腐れがないかどうか』から、『サーフィとその他』の区切りへ。


 ヴェルナーは自分の妻を、「彼女は私の女神だ!」と、事あるごとに主張する。
 久しぶりに会ったルーディも「俺の“つがい”は世界一かわいい」と、公言してはばからない。

 あの二人を見習うのも考えモノだが、たまには気の聞いた褒め言葉の一つでも言って、サーフィを喜ばせたいとも思う。
 だが、うまく言葉が見つからないのだ。
 世界中の言語はほぼ全て知っているし、語彙も豊富なほうだが、しっくりくる言葉が見つからない。

『特別』『好き』『愛してる』

 そんな使い古された所が精一杯だ。
 それだって、ヘルマンにとっては生まれて初めて言った相手なのだけれど。

――結局あきらめ、灯りを消してサーフィの暖かい身体に寄り添う。

 昔より、よく眠るようになった。
 サーフィと共に眠る事で、睡眠は単なる気晴らしから、幸せを得るものに昇格した。
 可愛らしい寝息を聞きながら、とろとろまどろむ。

(サーフィ……君だけが……僕の……)


……あぁ、君を称える素敵な言葉は、やっぱり今日も見つかりませんが、僕の好みは君だけです。




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