君を称える言葉が見つからない-5
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風呂場で一度抱いた後も、まだ足りなくてベッドへ押し倒し、さんざん貪った。
魔法灯火の柔らかな光が、疲れ果てて眠っているサーフィをぼんやり照らす。
その身体は、ヘルマンのつけた赤い痕でいっぱいだ。
サーフィの身体から、すっかり自分の痕跡が消えているのを見たら、執着じみた想いが沸きあがって、 熱心にそこかしこへ印をつけてしまった。
考えてみれば、こんな風に痕をつけるのも、サーフィが初めてだ。
「サーフィ……」
眠っている彼女の耳元へ、小さな声で囁くが、そこでヘルマンの言葉はとまってしまう。
ヘルマンは、サーフィを愛している。
とてもとても愛している。
彼女だけが特別で、どうだって良くないと思うのは、サーフィだけだ。
もう、昔のように割り切って他の誰かと寝る事はできないだろう。基準がすっかり変わってしまった。
『後腐れがないかどうか』から、『サーフィとその他』の区切りへ。
ヴェルナーは自分の妻を、「彼女は私の女神だ!」と、事あるごとに主張する。
久しぶりに会ったルーディも「俺の“つがい”は世界一かわいい」と、公言してはばからない。
あの二人を見習うのも考えモノだが、たまには気の聞いた褒め言葉の一つでも言って、サーフィを喜ばせたいとも思う。
だが、うまく言葉が見つからないのだ。
世界中の言語はほぼ全て知っているし、語彙も豊富なほうだが、しっくりくる言葉が見つからない。
『特別』『好き』『愛してる』
そんな使い古された所が精一杯だ。
それだって、ヘルマンにとっては生まれて初めて言った相手なのだけれど。
――結局あきらめ、灯りを消してサーフィの暖かい身体に寄り添う。
昔より、よく眠るようになった。
サーフィと共に眠る事で、睡眠は単なる気晴らしから、幸せを得るものに昇格した。
可愛らしい寝息を聞きながら、とろとろまどろむ。
(サーフィ……君だけが……僕の……)
……あぁ、君を称える素敵な言葉は、やっぱり今日も見つかりませんが、僕の好みは君だけです。
終